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19 なんちゃって図像学 夕顔の巻(3)六条御息所は源氏の戯れを見たか 霧の朝帰り


・ 六条御息所

源氏は、六条御息所にも、もう以前のような熱意を持つことができません。
難攻不落の人を落とすまでが楽しかったようです。
落とすまではあんなにひたむきに強引だったのに、今はどうしてこんなになってしまったのかと源氏自身が怪しんでいます。
『よそなりし御心惑ひのやうに あながちなる事はなきも いかなることにかと見えたり』

源氏の秋の物思いは藤壺宮への思慕で満ちていて、左大臣邸には途絶えがちです。

心づくしに思し乱るることどもありて  大殿には 絶え間置きつつ
六条わたりにも とけがたかりし御気色を おもむけ聞こえたまひて後
ひき返し なのめならむは いとほしかし

六条御息所という人は、16で前春宮に入内し女宮を儲けて20歳で春宮に先立たれ、その後は、趣味の洗練された美女として孤閨を守ってきた人です。
今は24歳の世間に声望高い佳人です。
17歳ばかりの源氏に口説き落とされた挙句棄てられたなどという評判は耐え難いものです。
思い詰める人だと知っている源氏もそんな恥を掻かせてはいけないと気にしてはいます。

・ 霧の朝帰り

霧の深い朝、源氏は女房に急かされて眠たげに溜息混じりに出てきます。
中将という女房が、格子を一間上げて、お見送りなさいませと几帳をどけるので、御息所は頭を上げて外を見ます。

源氏が前栽の植え込みの花が咲き乱れているのを去り難く眺めているのは類ない美しさです。

≪立派な源氏物語図 霧の朝帰り≫

🌷🌷🌷『霧の朝帰り』の場の 目印 の 札 を並べてみた ▼

・ 隅の間の高欄に

源氏が渡廊の方に行くのに、中将がお供します。
中将と呼ばれる女房は若く美しく、季節に適った紫苑色の薄物の裳を鮮やかに引き結んだ腰つきがしなやかで魅惑的です。

源氏は、中将を隅の間の高欄に座らせます。
打ち解け過ぎない節度ある態度も髪のかかり具合も見事だと思います。

見返りたまひて 隅の間の高欄に しばし ひき据ゑたまへり

「こんな美しい朝顔を手折らずに素通りできようか」と手を取ると、中将は物慣れた様子で、「朝霧も晴れないうちのお帰りとは、こちらにご興味がおありではないのでしょうか」と、御息所の側付きの意思の代行者としての話にすり替えます。

源氏を少しでも見掛けた人は、下々の者でも花の蔭で休らいたいと願うように、自分の好きな女や可愛い妹などをお仕えさせたいと願うようです。
まして側近くで源氏の様子に触れている中将ですから、主人の御息所との間柄を気に掛けています。
源氏が明け暮れいつも何か寛いでいない様子なことに一抹の不安を抱いています。

とても洒落た姿の侍童が、裾を朝露に濡らしながら、花の中に入り混じっています。

をかしげなる侍童の 姿このましう ことさらめきたる 指貫の裾 露けげに 花の中に混りて
朝顔折りて参るほどなど 絵に描かまほしげなり


📌 霧の朝の源氏の動線

①男の朝帰りが人目については主人の名誉にかかわると起こす女房に促されて、源氏は出て行く
②中将が格子を一間上げて几帳を寄せて見送りを促すので、御息所は顔を上げて見ている。

源氏は東面に出たのか南面に出たのか

③源氏は前栽の花に見惚れている。
④それから渡廊の方に行こうとするので中将がお供する。
⑤源氏は中将の魅惑的な腰つきに惹かれて隅の間の高欄に座らせて戯れかかる。

 南面から出たのに階でなく渡廊の方に行くのが不思議で、東面から出たのかとも思うのですが、
 東面から出ていこうとすると、中庭の前栽はその時に見えてしまうので、渡廊の方に行く理由がなくなるかもしれませんね。
 南面から出て前栽に目を留めて美しい前栽に導かれるように渡廊の方に少し歩いた、というようなことなのでしょうか。

📌 隅の間というのは、廂の間の妻戸を入ってすぐの角のところ、下図の斜線部の辺りのことだそうです。
廂の間に高欄はないので、隅の間の高欄とは、隅の間の前の簀子の高欄ということでしょうか。

源氏は東面に出たのか南面に出たのか

📌 源氏絵では御息所が見ている

源氏絵では、源氏が中将に戯れかかるのを六条御息所が御簾越しに見ていると描かれるようです。
中庭朝顔侍童も描き込まれ御簾の透け感も美しい構図を優先しているのでしょうか。

眞斗通つぐ美

📌 まとめ

・ 霧の朝帰り
https://x.com/Tokonatsu54/status/1711189380721979509?s=20



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