源氏物語 夕顔の巻 概略5(五条の家の内情)
・ 惟光の奮闘努力
惟光は忠実に偵察を続けています。
「どういう人かは全くわからないのでございます」
「相当に人目を忍んでいるようでございます」
「通りに面したあの長屋から、若い女房たちが、車の音がする度に覗き見ているようでございます」
「とても愛らしい女主人らしき人が垣間見えたこともございます」
「この前、身分ありげな車が通った時には、女童が『右近さん、見て見て!中将様がお通りですよ』と走って行くと、
聞きつけた女房が『静かになさい』と制しながら出てきたのですが、
慌てて、住居と長屋の間に渡しているだけの打橋に裾を引っ掛けてよろけて落ちて
『葛城の神さまじゃあるまいし、何て危ない橋なの!』と文句を言っておりました」「覗いているのも興醒めでございましたよ」
・ 頭中将の想い人か?!
「しかしでございますよ!」「『頭中将様は直衣でいらして、御随身のあの人やこの人もいましたよ』と、随身や小舎人童の名前を誰彼と数え上げて言っておりましたのでね、私もまさかと思いましたですよ」
「その車は、私も見たかったな」「本当に彼の車だったのかね」
源氏は、いよいよ五条の女が本当に頭中将の惜しんでいた常夏の女なのではないかと興味が募っていきます。
・ 五条の家の内情
「実は、隣の女房を口説きましたのでございます」「様子を探るには家に入り込むのが一番でございますからね」
「小さな家ですから、女主人らしい声が聞こえることもございます。私がおりますので女房のふりをしているんでございますがね」
「そこで女童などがうっかり召使の申しようなどしてしまうと、私の耳を意識して女房たちが素早くごまかして、同輩の女房しかいないふりを致すのでございます」
「でも、そんなことをしても、私にかかればお見通しでございます」
源氏はいよいよ気持ちが急いて、「今度尼君の見舞いの時に私も覗かせてもらうよ」と言います。
「仮住まいなのかどうなのか」
「それにしてもこの程度の家にいるのだから、これが雨夜に皆が言っていた下の品の女なのだろう」
「こういうところに面白い女がいるという落差に私もときめいてみたいものだ」
と源氏は思います。
Cf.『夕顔の巻』五条の家の内情
眞斗通つぐ美
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