自宅警備の心得と私のキャリア

 自宅警備員を始めて三十年近くになるが、最近の危機感は尋常なものではない。オレオレ詐欺が登場した頃から異変は感じていた。極めて手軽に大金を稼げる、ただそれだけの理由で犯罪に手を染める輩が一気に増えたのだ。
 スマホ一つで気軽にできる悪事を野放しにしていた付けは特殊詐欺集団の強大化と犯罪行為の狂暴化という形で善良な市民が支払う事態になってしまった。近年の凶悪犯罪を思い起こしてみるがいい。もはや日本から安全地帯は消えたと断じても過言ではないだろう。自宅警備の重要性は増える一方なのだ。
 それは警察や警備会社といったプロに任せるべき、といった安易な意見には組しない。警察関係者や警備会社の担当者を装って家屋に浸入する悪党がいないとは限らないからだ。我々は家人以外の全員を疑ってかからねばならないと言えよう。人見知りの赤ん坊と我々は大差ないのだ。見知らぬ者は皆、敵だと思え。そこまで疑わねば赤子のように泣く羽目になるのがおちだ。
 危険に対し脆弱なのは子供だけではない。奴らは高齢者の住宅を狙う傾向がある。あいつらは人の皮の被った人食いの獣だ。私の両親のように体も頭も弱った年寄りは、簡単に殺せる美味しい獲物でしかない。獣どもを住処に入れたら殺戮が始まる。今は平和な時代だと皆が言うけれど実際は弱肉強食の野性時代なのだ。
 死にたくなければ警戒を怠ってはならない。そして自分自身を鍛えねばならない。心身共にだ! ずる賢い敵を上回る狡猾さと、多人数で襲い掛かって来る殺人鬼を撃退する筋力そして命を失うかもしれぬ恐怖に打ち勝つ胆力が我々には求められるのだ。たとえ身体は自宅にいようとも、各々方おのおのがた、常在戦場と心得よ。さもなければ家族は死ぬことになる。お前の怠慢のせいで! お前の考えの甘さのせいで! 大事なものが失われるのだ。
 上記の如く自宅警備の重要性は増えこそすれ減ることはない。大切なものを守り抜くために、私は自分自身を鍛え抜くつもりだ。それが自宅警備員としての私のキャリアアップである。そこに妥協の余地はない。

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 上記は応募概要に書かれていた文章である。その通りだと思う。だから私は本稿を投稿した。
 投稿の理由は、もう一つある。政府が引きこもり支援に関する予算を増額する、という趣旨のニュースをネットで見たような気がして、それに対する意見を表明したいと思ったのだ。
 私たち自宅警備員は警備活動で忙しい。引きこもり支援事業に付き合っている暇はないのだ。そこにリソースを費やすよりも、悪くなる一方の経済と治安の回復に貴重な税金を回すべきだと私は確信している。ゆとりある生活が蘇り凶悪な犯罪が減ったとき、我々は自宅警備の任を降りるだろう。
 人様のことをとやかく言う前に、自分の頭の蠅を追え。
 追記。お前らが蠅なのだ! というご意見は無しでお願いします。

#わたしのキャリア


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