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エリクソンは「他者のために生きる」ことこそ幸福であると説く。しかしこの他者のためとは自分を愛した上でその自然なる愛から他者を愛すということであって、そこが抜け落ちていたために私は2年間犠牲的になった。

エリクソンは「他者のために生きる」ことで幸せになるのだと主張する。

しかし私は、「それは自分を愛すことができる人間がその自然なる愛でもって他者を愛すこと、それが他人のために生きるということである」ということを理解できずにいたため、2年間ほど自己犠牲的になった。

「他人のために生きる」と聞くと、それはあまりにも単純な響きであり、もはや手垢に塗れた表現であるため安直に「そうか、他人に尽くせばいいのか」という理解に繋がりかねない。私はそう理解し、他者に尽くすことを17歳の頃あたりから始めた。

しかし「他者のために生きる」ということは、自己を愛すことができて初めて可能になるもので、自己を愛せていないのに、他者を愛しているということはないのだと私はのちに気づくことになった。

私はそういう自らを犠牲にして他者に一方尽くすことを、「自己犠牲的利他」と名付けた。自己犠牲的利他は、"他人の望みを叶える"あるいは"他者の要求を満たす"ということをしているだけで、その本質は他者の"欲望"に忠実に生きることであり、そこには私という主体がないということを後に知った。

つまりエリクソンは、他人のために生きるということを常に念頭に置くけども、その他人のために生きるとは、自分を愛すことができて初めて、他人のために生きるということが可能であり、自らの自己愛が望ましく昇華されるからこそ、そこに他者愛が生まれてくるという過程を含めてのものだったのだと、私は後に知らされた。

これに気がつくのに時間がかかった。

2年、いや3年はその真意に気づくことができなかった。あれほどたくさんにその教えを聞いていたというのに。

自らを愛し、そして他者を愛す。ここが抜け落ちてしまえば、空虚な無価値観を含む、自身に鞭を振るう虚栄の洗脳的な教えが実装されてしまう。

おそらく現代の若い方々が、他人のために生きると聞いてもいまいちハッキリしないのはここだ。おそらく自らを愛せるように、愛されたことがないからだ。

大人の精神が幼稚化してきた現代においては、まだ自己愛が完成されていない親の元で生まれ育ってしまったために、親が自己愛に必死になっている間にその思春期を迎えてしまい、ちっとも自分の心には見向きもされずに、他者愛など向けてもらえることができずに、ただただ自分の無価値観とその厭世主義とが醸成されるような環境下で、「他人のために生きろ」と言われたことによって、「自分を愛せないままさらに他人の望みを叶えろ」という理解に、極度に不運にも、不遇にも、破滅的な理解をされてしまったことによるものだ。

おそらく仏教を聞いても幸せになれない若い年代の問題はここだ。

仏教での自利利他の教えの、"自利"の部分が完全ともいえるだけ抜け落ちてしまっていて、その結果洗脳的に他者に尽くすことをその教えと感受する、という一種の時代齟齬の部分があるようだ。

時代齟齬であり、文明の転換点であるはずだ。

自らを愛すことだ。おそらく自らを大切にすることだ。他者に悩みを話すことだ。他者を頼ることだ。

いくら見せかけの鎧だけを着込んで、能力と知識だけを積み重ねても、その根本のところで心が繋がっていないのだとしたら、どうしてその人自身が幸福であると言えるのか。

ここが人生の罠だ。

ちっとも学もなく、能力も人並み程度で、容姿も優れているわけでもない人が、とても幸福に暮らしている原因はここだ。

自分を愛せているからだ。
そして他者を信頼しているからだ。

私は常に自身の能力と知識と才能とを上げようと頑張ってきた。

常に私の力を向上しようと走り続けてきた。

しかしそれで幸せを感じることは一つもなかった。

それはおそらく私の父がまだそれを追っているからだ。

効率化・自己の能力・利己的願望・本当のところで自分を愛せない・故に他者も信頼できない・1人で物事をやる

私はこの馬鹿げたレールから脱却する。

私は私のために生きるのだ。

この世を生きるのは才能ではない。

この世を生きるのは信頼である。

おそらくこれだけが人生にとって必要なことである。

これさえ子どもにふんだんに伝えられたなら、あとは何とかなるだろう。

参考文献:

エリクソンの発達課題 
「抱きしめよう、わが子のぜんぶ」
「子どもの心の育てかた」
「子どもの心はどう育つのか」
「完 子どもへのまなざし」佐々木正美著

「うつの効用」
「本物の思考力を磨くための音楽学」泉谷閑示著

「繊細さんが「自分のまま」で生きる本」
                武田友紀著
「嫌われる勇気」 岸見一郎 古賀史健 著

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