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[創作]まだ見ぬ人
永い永い冬を抜けた喜びの春は、その幾千のノイローゼの先に、確かにあった人生の青い喜びに、顔を紅潮させながらそれでいてまだどこかぎこちない顔ではにかむ君と、繋がれた手からその体温の温もりとこの季節の予兆を感じる時、私はこのおかしな人生に謝罪と感服とで街を歩く。
「こんな休日は久しぶり」
「僕もちゃんとして過ごしたことはない」
2人はどうもその距離感と、この許された運命に心の落ち着けるところが分からず、その不安から恋は高まる。
「このコーヒーおいしいね。」
「そうだね、これからいくらでも飲めるよ。」
学生だろうと500円のコーヒーは何杯でも買ってやる。お金が減ることが嬉しいや。
これから風は秋めいて、秋に満ち満ちる。色をつけた葉はその黄色、赤色、朱色、茶色、グラデーションに彩られて風と共に舞え。澄んだ涼しい青空は秋の時に最も高くなる。いずれの子どもたちの夢の彼方に、いつかの羨望と情景を含む。色彩は私たちの夢を取り込み、夢での無意識は発光する白い太陽からのすべての光の反射である。雲がだんだんと厚くなり、灰色を黒に変える時、そうして雪が降り始める。
一粒の雪の綿、深々と降り積もる雪の中で、僕たちはマフラーに身を包んで、白い息と共に外温と体温とを対照しよう。
喜びの春を迎えた後に降り積もる雪は、
ただ僕たちの繰り返す体温を近づけるだけだ。