優秀だけど悪な人、の悪の部分を構成する一つの素因は「さびしさ」
私はかねてより経営者の小野壮彦さんのお話に色々と示唆を受けており、その中でも善悪についてのお話が心に残っています。
小野さんは善と悪が総体として人間の人格に貫いている、というようなことを話されていまして、人間には変わりやすい部分から変わりにくい部分まで断層があり、そのすべての層を善悪が貫いている、と話していました。
分かりづらくなってしまいましたが、人にはポテンシャルと言われる、より下層の評価段階があって、そちらの方に潜れば潜るほど"知識"や"技術"よりもっと根源的なその人の資質を見ることができる、と言われていました。
その中で善と悪という言葉が出てきますが、
私はパナソニックの創業者の松下幸之助さんと京セラの創業者稲盛和夫さんを尊敬していまして、二人が口を揃えて言うことが「私心があってはいけませんよ」ということでした。
おそらくお二人ともひと世代前に全盛を築かれた方ですので、その頃には小野壮彦さんがエゴンゼンダーで開発したポテンシャルモデル的なものはなかったと推察されます。
しかしながら昔の人の鋭い感と言いますか、老練した人間洞察眼が、その当時は指標がないにしてもすでに人間の本質を見抜かれ、そして本人たちの口で心の仕組みを語られていたのではないか、と思います。
そしてその"私心"がある人物が、"悪"の人物であると思われます。
そしてその悪を構成する要素として、そこには「さびしさ」が一つの要素としてあると思うのです。
現に私は日々色々な人と関わり合いますが、この人は私心があるな、と思う人は決まって心の奥底に寂しさを抱えた人たちなのです。
おそらく親から自分の気持ちに焦点を当ててもらえなかった、ところから来ていると思います。そのような人物は精神的に成熟していませんので、必然的に少し幼い願望を抱いてしまいます。
その最たる例が"注目されたい"ということです。
それは幼い頃から自分の気持ちに焦点が当たらなかったから、注目されたいと思うわけです。これは必然的な流れです。
しかし仕事、あるいは商売というものは本来他者とのやり取りですから、一人の人間として成熟していることが求められるわけです。
しかしながら幼い願望を心の底に秘めたままの人物は、商売が自己実現の道具、となってしまいます。
本来なら商売や仕事というものは"利他"から派生するものですが、こと自己実現が目的の仕事になってしまいますと、当然周りから一時的な評価は得られても、永く仕事を続けていくことはできません。
それは自己実現というものの性質はそれが一度実現されてしまうと燃え尽きてしまう、という性質があるからです。
一方で"利他"の精神に由来した仕事は、燃え尽きることはありません。
そこには喜びと、感謝があります。故に本人はとても元気です。
このようなところから、幼い願望が胸に秘められた人物は仕事をする上で大きな失敗をする可能性が高く、事それが「実力」のある人物ですと社会的なダメージが浸透してしまう可能性も少なくありません。
私心という悪は、幼さ、であり、その要素は「さびしさ」であると思うのです。
しかし私はこの幼い願望を持った人物が自己承認、つまり自愛(じあい)ができるようになれば、問題は解決する、と思っています。
ここがまさにカウンセラーという仕事の役割だと思われます。
幼き願望を認められるように、つまり自愛をできるように、その人をサポートしてあげること。時には背中を押し、時には先に道を歩いたものとしてその道は怖くないよ、と言ってあげることです。
ここがカウンセラーのやる仕事です。
そしてそこを通った人物は、つまりそこを通って幼き願望が認められ消化(昇華)された人物は、先ほど言った"利他"を本当の意味で理解する人間になると思うのです。
これが子どもが大人になる素晴らしさであり、
これが仕事というものの奥の深さであり、
そして同時に人間というものの素晴らしさだと思います。
このように、悪や私心には「さびしさ」が潜んでおり、そこを解消する道もあるんだよ、そしてそれがカウンセリングというものなんだよ、そしてそれを越えた世界が、"仕事"と言えるものなんだよ、という内容をお話しさせてもらいました。
これは小野壮彦さんの理論と、私が日々関わり合う大学生、そして素晴らしい人間理解をされている先人の方々の思想に触れ、見出せたことでした。
私は悪の人物がいたとしても、それだけで終わりにする世界にはしたくないと思います。
ここまでは具体的な方法論ではなく、概論を述べさせてもらいました。具体的な方法論は申し訳ないのですが、そこまで私にノウハウがなく、分かりません。
逆に言えばそのノウハウを知ることこそ、この大学ですべきことだと思われます。
私は今年入学した大学一年生ですので、これからその方法論が書けるくらいの人間になれるよう、頑張ります。
もし書けそうだ、と思った瞬間があったらすぐに書きます。
ここまで読んでくれて、ありがとうございました。
小野壮彦さんの著書はこちらになります↓
小野壮彦『人を選ぶ技術』