[創作]気品のある冗談を言う人
私は彼と恋に落ちた。
はじめて彼を見た時、深い顔をする人だな、と思った。
私は日頃より自分の限界や力不足を感じていて、どうしても高い壁を突き破ることができなかった。
でも彼は常に笑っていた。彼は常に笑っていて、そして彼が言う冗談の節々に感じる知性は、「すべて筋が通っていた」。
私はとても興味を持った。彼は何を見てきたのだろう、彼は一体その若さでその精神にどんな巨魁を抱えたのだろう。
ある春の日の出来事。彼は行きつけのカフェで私に向かってこう言った。
「苦しみがあったから、君のことを好きになったんだ。」
私はその時、私の突き抜けることができない壁を、彼が一緒に壊してくれた、と思った。
そうして私は彼を愛したい、いやすでに愛している、という熱が身体に込み上げるのを感じた。
あれから3年の月日が経とうとしている。
今日も彼は笑う。
その偉大な彼の努力という業績に誰も気づかず。
それでも彼の冗談に人々の心が共鳴して。
私は彼の横顔を傍目に、ここずっと降りしきっている雨が止むと予想された、天気予報のタブを開いた。