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良く寝た反物

母が遺した着物類の中に気になる反物がありました
高島屋の包装紙にクルクルと巻かれ、ボールペンで「おねえさんへ」と書かれた物

パッと見は濃いピンク
良く見ると縦糸が黒、緯糸がピンクで織られた紬
証紙には結城、紬とは書かれて、素材は毛と絹。マークなどは良く見る物とは違うと記憶していて、虫喰いも数箇所あったので大切に保管していたという訳ではありませんでした。

書かれた「おねえさん」とは商売をしていた家の6人兄弟の長男(父)の元へ嫁いで来た母のことです。
一番下の叔父は当時中学生で、住み込みさんも含めてお兄ちゃんのお嫁さんは「おねえさん」。皆んながそう呼んでいました。

とはいえ、母本人は8人兄弟の下から2番目。大家族のお姉さんは中々荷が重かったのでは?と思います。

そうそう、90歳近くなる叔父、叔母は母の思いでを語る時は当時と変わらず「おねえさん」と言っています(笑)

さて、ピンクの反物はというと、東京在住の親戚が遊びに来る時にお土産として持ってきた物らしく、お嫁にきてから割とすぐにもらったようです。色や素材の理由か、あるいは着る機会が想像できなかったのか、反物のまま残されていました。

それが、コロナ禍で私の和裁熱が蘇ったことをきっかけに、やっと着物になることが出来ました。

母の手元にきてから65年、仕立てられることなく良く寝てましたね。
とはいえ、安眠だったわけではなく、20年前には素材の特性を知らない私によってジャブジャブと洗われるという事件も!
多分縮んだと思うけど再び棒に巻かれて寝かせられていました。

65年程経って、私の拙い手で形になるとは母も想像していなかったと思います。

袖を通すと、色々な思い出と共に元気になる大切な1枚なのです。

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