鈍いの、私は【女の第六感】1439文字#青ブラ文学部
『第六感』→五感に加えてもう一つ持っている六番目の感覚と言われているもの。「直感」や「勘」時には「霊感」などとも言われる。
「ないな、私には」
私、三枝 麻里奈(さえぐさ まりな)は、昔から『鈍感』『鈍感』と言われて育ってきた。そんなに鈍感?と私自信は思うけれど、「ねえ?何かここ空気悪くない?」とか「あ、雨降りそう」とか言われても「えっ?そう?」なんて具合の鈍感さではある。
けれど、そんな私にもプラスな面での女の第六感はあるのかもしれない、そんな事を思う事が最近、増えた。
「三枝さんっ!」
来た。
「三枝さんっ。おはようございます」
「…………おはよう……」
彼は、会社の後輩の山羽 亘(やまば わたる)彼と初めて会った時から、私は思った。
自惚れかもしれないけれど、思った。
『山羽君………私の事が好きだな……』
何でこんな事を思ったのか、私だって分からない。けれど、第六感が『直感』だというなら、これは私の中の第六感だ。
私が彼の指導係として任命されてからは、あっという間に距離が縮まっていった。山羽君は親しみやすく、穏やかな青年。
けれど、時々見せる…ふっとした穏やかな笑顔で見つめられてるのが分かると、何だか私もくすぐったくなってくる。
この気持ちが『好き』なのかは、まだ分からないけれど。
☘☘☘
「三枝さん」
仕事終わり、山羽君に声をかけられた。
「どうしたの?仕事で分からない所でもあった?」
「いえっ……あの……」
「……?なあに?」
山羽君は、何を言おうとしているのだろう。
「あのっ!三枝さんっ!」
「なあに?」
「もし、お時間がありましたら、会社近くにある喫茶店でお茶しませんかっ!」
……まさかのお誘いである。
けれど、私の口は、頭より先に言葉を発していた。
「うん。いいよ…」
この時に見せた山羽君の表情(かお)を私は忘れない様な気がする。
「……っ、やった。ありがとうございます!」
こうして、山羽君と一緒に会社を出た私は、会社近くにある喫茶店に向かった。
山羽君と2人で会社を出たのを誰かに見られて変な噂をされるだろうか。
なんて思ったものの、別にいいでしょ?と、何とも呑気な私が顔を出して、気にせず山羽君と喫茶店へと入った。
私はアイスレモンティー、山羽君はアイスコーヒーを頼み、向かい合わせに座っている。
少しの沈黙を破ったのは、山羽君の方だった。
「あの……三枝さん」
「ん?」
「失礼を承知でお聞きするのですが……その…………三枝さんは……お付き合いしている方とか……いるんですか?」
おや…?これは……
「ううん。居ないよ。最後にお付き合いしたのは、大学2年。
そこから、恋愛とは離れてます」
「そう……なんですね……」
………わかり易すぎる……。
山羽君、今絶対…ホッとしてる。
これは……私の第六感とか関係なく、もしかして…山羽君が凄くわかりやすいのだけかもしれない。
そう思うと、段々可笑しくなってきた。
「ふふっ、あははははっ」
「!!何笑ってんですか?」
「……山羽君……わかりやすい……っ」
「………えっ!!!!?」
山羽君は、顔を一気に真っ赤にさせ、『照れてます』と顔に書いてある。
「……山羽君」
「は、はいっ!」
「私、皆から、良く鈍感だって言われるのっ」
「………俺、頑張りますっ!!」
山羽君は、喉が乾いていたのかアイスコーヒーを勢いよくストローで飲んでいく。
そしてむせる。
そんなコロコロと表情が変わる山羽君を見ながら、私は山羽君とのひとときの時間を楽しもうと思っているのだった。
〜終〜
こちらの企画に参加させて頂きました。
山根あきらさん
第六感というと、あまりプラスなイメージがないなと思ったので、こんなお話にしてみました。
よろしくお願いします。