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道端に転がっていた縁 1314文字 #青ブラ文学部

始まりは些細な事だった。
リトルの練習を終え、家に帰っている途中、そのボールはあった。

「誰のだよ。こんな所に野球ボール落としやがって」

俺は、リトルチームの監督から『道具は大切にしろ』と教わってきた。
だから、こうして自分が大事にしている野球道具が道端に転がっているのが少し許せなかった。

しゃがんで転がっていた野球ボールを取ろう……そう思ってしゃがもうとしていた時………

「あっ!そこにあったんだ!」

元気な男子の声が聞こえてきた。

「それっ!俺のボール!!」

見るからに野球少年なんだろうなという格好をしている同い年位の男子は、元気よくこちら側へと駆けてくる。

「ありがとうっ!それ、俺のボール!」

「………ちゃんとしろよっ」

「え?」

「野球がもし好きなら、道具は大事にしろって言ってんだよ!」

最悪な初対面。
険悪?になりそうな初対面だった。


だけど…………


「お〜いっ!陽斗(はると)〜っ!おはよ〜〜!!!」

「朝からうるせーよ龍太郎。何でそんな朝から元気なんだよ」

「えっ!?だって、朝って気持ちいいじゃんかっ!」

「………………意味わかんね」

俺と最悪な初対面をした龍太郎。
そんな俺達は今、高校2年生になっている。強豪私立の野球部ではなく、強豪の公立で野球を続けている。

最悪な初対面をしたものの、何だがかんだで、龍太郎とは仲良くなった。
中学は違っていても、大会の度に顔を合わせたり、練習試合をしたりと、あの時から交流はずっと続いていて、そして今に至る。

「調子はどうなんだよ。龍太郎。
ちゃんと朝ごはん食べてきたか?」

「食べたよっ!バッチリ!おかわり3杯しちゃったもんね〜!」

「ははっ。すげーな」

あの時から、こうして仲良くなれたのは、龍太郎の明るい人懐っこさが大きい。野球部では、この秋からエースナンバーを任される様になったものの、それでも、この人懐っこさは健在だ。

野球部のみんなも、龍太郎の事を友人として、先輩として大切にしているのが伝わってくる。

「何だよ凄げーなって、女房様は少食ですか?」

「俺だってちゃんと食ってきたわ!
……………2杯だけど……」

俺は有難い事に、捕手として1年生からベンチ入りをしていた。副キャプテンとしても、投手とチームを引っ張っている。

「……あ〜!早くボール投げてーなー」

「今日は投げない日だろ。ちゃんと体作りしてろっ」

「え〜!ケチっ!!」

「な゛っ!ケチじゃねーのっ!!」

そんな、いつもと変わらない会話をしながら、家からは少しある野球部の練習グラウンドへ向かう。

道端に転がっていたボールが、今の俺と龍太郎の関係を作ったのかと思うと、何だが面白い。

最初こそ最悪だった出会いも、今では幸運だったと思う。

あの時、確かに繋がったのだ。

あの時、龍太郎のボールを拾おうとした瞬間、出会いは『道端に転がっていた縁』へと姿、形を変えたのだ。

「陽斗〜!早く行こうぜ〜!!」

「わかったよ!」

朝、段々と賑やかになってくる時間。

俺と龍太郎。2人の声は、静かに、けれど元気よく朝の空気を透き通っていく。

〜終〜

こちらの企画に参加させて頂きました!

山根あきらさん
②の写真で妄想してみました。
野球ボール!最高です(^^)

ありがとうございました(⁠ ⁠ꈍ⁠ᴗ⁠ꈍ⁠)

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