消えない、貴方。1126文字#シロクマ文芸部
かき氷を売っていた。
もう夕方から夜になる時間帯で、日は沈みかけていてが、夏の暑さが和らぐ事は全く無く、帰宅している最中にも、夏の暑さがしみてくる。
帰りにコンビニ寄ってアルコール3%の「ほろよい」を購入し、帰宅。
汗をかいていたから先にシャワーを浴び、作り置きのおかずを何品か取り出し、冷凍ご飯を解凍すれば、あっという間に晩御飯けん晩酌の出来上がり。
エアコンをかけて、テレビで録画した恋愛ドラマを見ながらの晩御飯だ。
プシュッ!と缶チューハイを開けると、甘さと冷たさが、私に癒しを与えてくる。
「う〜〜〜んっ!美味しい〜〜」
缶チューハイを飲みながら、晩御飯を食べる。私は、ほんのたまにしかお酒は飲まないし、お酒に弱い。
けれど、今日飲みたくなってしまったのには、理由があるのだ。
「…………もっと……大人な人になってたな……」
私が秘書をしている会社に、彼はやって来た。勿論、自分が企画している事業のスポンサーになって貰う為のプレゼンへとやって来たのだが、私は……正直戸惑った。
けれど、お互い社会人となった今、当たり障りのない挨拶は出来る様になっている。
けれど、それだけ…。
お互いすぐに業務へと戻り、もうそれきり会話をする事はなかった。
「……当たり前じゃない……振られた私が、彼を傷付ける事言ったんだから…」
けれど、言った事に後悔はしていない。
あれが私の本音で、何よりの気持ちだった。
こうなることも、分かって言った。
私は、殆どのお皿を食べ終え、飲んでいた缶チューハイを、テーブルの上に置く。
食べ終えた皿を流しに置きに行き、缶チューハイの残りを、流しに行ったついでに取ってきた薄グラスと氷の中へ入れると、窓際にあるベッドの上に腰掛け、夜の町を見つめる。
「………私、まだ前に進めてないのかな……」
彼と別れてから、私はだれかと付き合う気にはなれなかった。好意を寄せて貰った事もあったけれど、私はそれを全て断ってきた。
……私の心の中で…こんな声がする。
『……やっぱり……彼がいい……』
こんな気持ち、本当は早く消したい。
自分が苦しんで傷付くのは痛いほど分かる。けれど、どうしても私は断ち切れない。自分で本当に終わりにする言葉を言っときながら、私は全く吹っ切れていない。
彼が好き。
彼の事を忘れられない。
私は、毎日願ってる。
風の噂でも、何でもいいから、彼が他の誰かと付き合ったという話を聞きたい。
そしたら、私はきっと諦められる。
そうじゃないと、私は駄目………。
消えない彼の事を思い出してしまいながら、私は少し氷で薄まった『ほろよい』のコップを取りに、ベッドから静かに立ち上がった。
〜終〜
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こちらの企画に参加させて頂きました!
小牧幸助さん
ありがとうございました。
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