雲の中へ(エッセイ)
山の天気は変わりやすい。
よく言われる言葉で、実際そうだと思う。
そんな山は、私にとっては身近で、大人になってからはもっと身近な距離へと変化した場所。
けれど、登山するとか本格的な事はしていないし、これからもする事はないのかな〜なんて思っているが、そんな私は山を登っている。
『車』で、山を登ってる。
文明の利器に感謝。
今年の7月、8月は酷暑だった。
暦の上では秋である今も、昼間は暑い。
そんな、まだ酷暑が元気だった日。
何処か涼しい場所はないかと考え、思いついたのが『山』。
去年、何十年か振りに行ったその山は、まだ10月、11月頃でも標高の高い場所では極寒だった。
冷たく突き刺すような風が吹きすさび、いや〜〜〜!!と、来たことを後悔していたのも懐かしい(笑)
そんなこんなで、標高、約1390メートル付近に到着。
山を車で登りながら感じていたが山を登れば登るほど、車のエアコンがいらなくなる。窓を開ければ冷たく澄んだ空気に乗った風が、車の窓から出した手を冷やしてくれる。
それに、馬力の少ない車で登るには、エアコンをきった方が効率が良くスイスイ〜と登ってくれるので、この山の涼しさは力強い。
標高の高いその場所は、元々はロープウェイの駅だった廃駅を利用し、食事とカフェを営業しているお店の場所。
登山をする方の駐車場にもなっていて、外には休憩する椅子が何脚と設けられているその場所へと向かっていた私。
晴れていれば、ここから周りを囲む山々が綺麗に見えたのだろうが、今日は生憎のモヤがかり。
雲の中に居るようだし、実際、雲の中にいたのかもしれない。
冷たい風が体を吹き抜け、それと共に雲の水蒸気も風に乗って次々と流れていく。
「涼し〜な〜〜〜〜」
カラッとした涼しさではないけれど、そんな湿気を感じるようなモヤッと感はなく、ただただ、風の冷たさを感じる事が出来る。
こんなに涼しいなんて……。
なんて幸せだろう。
白い雲の中に居るような感覚の中で、私は少しの間『山の涼』を堪能する。
それなりに人はいたものの、涼を堪能するには気にならない。
堪能したら、下る山。
平地へ帰れば、またあの蒸し暑さが待っているが、せめて、山を下る間は、涼をまだまだ味わおう。
そう思いながら、私は帰路へついた。