出会ってはいけなかった(エッセイ)
もう戻れない。
私は…もう戻れない。
もう、お手軽なお値段の『そうめん』に、私は戻れない!!(笑)
何故って……?
………絶対的なそうめんの王様(私の中で)の『揖保乃糸』に出会い、その味を知ってしまったから……つ!!!
何なのだ!あの!揖保乃糸の美味しさは!!
始めて食べた時の私が、雷の様な衝撃を受けた事は言うまでもない。
茹で上がった麺を水で締める。
水に触れさせている時のそうめんの色は直ぐに違いがわかる見た目を見せてきて、冷えた麺は透き通り、反射によって光り輝いている。
そして食べやすい大きさにそうめんをクルクル巻いて纏めていくのだが、その時の手に伝わるそうめんの感触も、今までの食べていたそうめんとは少し違う。
……トゥル、トゥル、ツル、ツル。
柔らかく、麺自体がとってもしなやかで、食べやすい大きさに纏まっているそうめんから『私、美味しいですよ』と教えられているようだ。
「…………っ、早く食べたい!!」
私は手早く……最後は少し雑に(笑)そうめんを食べやすい大きさに纏め、昆布つゆでつけ汁を作り、いざ!実食!!
透き通って纏まっている麺を箸で取り、つけ汁へとつける。
つけ汁への中で踊るそうめんを少し掬い、ズルズルッと勢いよく吸っていく。
…………………美味し〜〜〜〜〜!!!!!
口に入れた瞬間ツルツルのそうめんは、しなやかな歯ごたえや食感となって私の口の中に入っていく。
そのツルツルは極上の味となり私の食欲を刺激してくる。
……本当に美味しい……!!
少しお安いそうめんは、どうしても麺の硬さやボソボソ感というのか……見た目から何処となく粉っぽさがあり、食べた時もあまり美味しく思わなかったのだが、『揖保乃糸』は違う!!
お値段に見合った、素晴らしきそうめんだった。
私は最後まで無心で食べ続け、あっという間に完食。
……冒頭にも書いたように、『揖保乃糸』に出会った私は、リーズナブルなそうめんには、もう戻れなくなった。
舌が贅沢になってしまったのだ。
けれど、後悔はない。
家庭の味方のそうめんが、少し階段を登り、たまにしか食べないものへと変わった。
けれど、そんな「たまにしか食べないもの」へと格上げされたそうめんを食べる時の至福は…極上となって私を満足させてくれる。
もう、そうめんの季節だ。
たまの極上を、味わおうと思う。