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見つめてます 1351文字#青ブラ文学部

「……あと1人、あと1人……」

なんのこと?って?。

私が応援しているプロ野球チームが、あとワンアウトとることが出来れば優勝するからだ。

東京ドームでの試合。

それを私は、テレビ中継で観戦している。本当は東京ドームに行って生で観戦に行きたかったけれど、今日の午前中に少しめまいを起してしまい、大事を取ってテレビ観戦となったのだ。

「いよ〜しっ!ツーストライクッ!」

私はソファに座りながら片手にメガホンを持って叩いている。

もはや画面一点集中。
周りのことなど見えていない。

年下の恋人である『悠一』が、自分と私のためにいれてくれた紅茶の事も、ソファの隣に座って、私をじ〜っと見つめている事も。

『空振り三振〜!!〇〇!ついに悲願の優勝です!!』

「やった〜〜〜〜〜!!!!!!」

私は大喜びっ!そして1人で歓喜っ!!

ファンになってうん十年。
こんな瞬間を迎える事が出来るなんて!

「やった〜!やった〜!!!!」

私が1人でキャッ、キャッしている姿を、悠一はずっーーーと見つめている。

何か話しかける訳でもなく、ただ静かに、じーーーっと、私を見つめている。

そんな悠一に、やっと気がついた私。

「あれ?悠一、いつの間に隣に……」

「ずっーと居たけど?あと1人って舞菜葉(まなは)さんが言ってる辺りから」

「…えっ…、っ!ほ、本当?」

「ほんと。紅茶も冷めちゃった」

なんということか………っ。

私とした事が、大切な恋人の気配に気付けず、夢中でテレビを凝視してしまっていたなんてっ……。

「ご……ごめんね悠一」

「……別に、怒っていないよ」

「……そ、う………?」

そういう悠一の顔には『不満』『かまってほしいんだけど』って書いてある気がするのだけれど……(笑)

私はソファの上で悠一と向き合うように正座して座る。

「本当に、ごめんね悠一…」

シュンっ、とした私の姿が面白かったのか悠一は少し吹き出して笑い始めた。

「あはははっ!舞菜葉さん、真面目過ぎっ!」

「だって!いくら応援に夢中になってるからって、…………隣に座った恋人に気付かないなんて…………終わってる………」

シュン……っとしている私を、悠一は顔を近づけてまたじーーっと見つめてくる。

「……何でそんな見つめてくるの……恥ずかしいじゃない……」

「……俺、怒ってないよ。自分の応援しているチームが優勝しそうになってるのを、楽しそうに見ている舞菜葉さんの表情(かお)見てるのが、俺は楽しかった」

「……えっ?」

「年上の舞菜葉さんは、俺の前だとふにゃふにゃしてくれる時の方がまだ少ないし、こうやって無防備にキラキラしてる舞菜葉さん見てるの…俺、楽しかった。


好きだな〜って思ってた。」

「ほんと?」

「ほんと、だから、俺がじーーっと見てるの、気付かないで欲しいな〜って思ってたんだとな〜」

私の心はキューーーンッとした。
ときめいた。

また、好きが積もった。

「ねえっ!悠一」

「何?」

「どっちが長く見つめてられるか、勝負しようっ!」

「え〜?」

「私、自信あるよ〜!ジーって悠一の事見つめちゃうからっ!」

そう言うと、悠一は向き合ってきて、私の耳元で静かにこう言った。



『俺に勝つなんて、出来るわけないでしょ?』


って。


〜END〜


こちらの企画に参加させて頂きました。

山根あきらさん
東京ドーム、薄めかもしれません💦
よろしくお願いします(^^)







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