少し秋の音を聴く(エッセイ)
暦の上では、もう秋と言ってもいい暦へと移り変わった。
けれど、昼間はまだ夏の暑さが残っていて、亜熱帯の様なスコールの雨も降っているし、台風も生まれた。
これで暦の上では『秋』だと言われても、正直、はい?とはてなマークは浮かんでくる。
そんな今。
けれど、聞こえてくる様になった。
秋の季節に鳴き始める虫の声を。
ジリジリ……
「……やっぱり……秋なんだ」
気温がいくらまだ高くても、虫達は鈍感になった私の人間としての嗅覚や感覚よりも何倍も優れていて、そんな少しの変化を見逃したりしないのだろうと思う。
大袈裟かもしれないけれど、そうする事が、感じて敏感に反応する事が、他の生物、虫達の生き方なのかもしれない。
夜だって、決して気温が下がって涼しい時間になるにはまだまだ時間がかかっている様に思うが、それでも虫達は鳴き始める。
ジリジリジリッ
リンリンッ
ジリジリジリッ
リンリンッ
秋の音。
秋の訪れの音。
秋という季節は、無くなってなどいない。
少しずつ、少しずつ、私の元へと訪れてきている。
自然が…運んできている。
まるで荷物のように運んで貰わないと、私は感じ取ることが難しい。