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軋む恋 1103文字#青ブラ文学部

※不倫の話になります。
苦手な方は、直ぐに戻って下さい。

✾✾✾
……もう……駄目な気がする。

もう……このまま落ちていってはいけない気がする。

もし、恋という名の「橋」があるのなら今その橋は軋んでる。グラグラしている。

グラグラしていて、いつ倒壊してもおかしくないのだ。

軋む恋。
 揺れる恋。
  
だけど……
 これは… 
  確かな恋。

けど………
 もう…………… 

✾✾✾
彼と会った次の日の朝。

私は彼よりも必ず早く起きる。

そーっと、泊まったホテルのベットから起き上がると、昨日の夜、熱情のままに脱ぎ捨て、床に散らばった下着を静かに手に取る。

手に取った下着を持って、自分の鞄が置いてあるソファへ向かうと、新しい下着の入った白いシルクの巾着を取り出し、昨日来ていた下着と新しい下着を交換する。

「はぁ〜、我ながら何やってんだか…」

乱れたままの髪を手櫛で軽く梳かしながら、私は左手首に付けたままになっていた黒いゴムで髪を緩いお団子にして結ぶ。


今もベッドで寝息をたてている彼。

言わずもがな、私と彼は、人を傷付ける関係だ。……最低な関係だ。

苦しいのに……苛(さいな)まれてしまう癖に……被害者ぶっている様な感覚を持つのにも嫌気が差す。

別れよう。

サヨナラしよう。

そう思っていても、

彼の強い温もりと情熱に絆(ほだ)されてしまう。

私は独身。
彼は既婚者。

「……同性傷付けるなんて……サイテー」

いい奴ぶって、悪魔にもなりきれなくて。自分が大事で、それで精一杯で…。

一番、嫌われる人間だ。

私は新しい下着を付けた格好のまま、ゆっくり静かにホテルの窓際へ進んでいく。

丈夫な絨毯のおかけで、足音が全くしない。この無音が…心地がいい。

窓には厚手の遮光カーテンがひかれている。私は窓の前に立つ。

下着姿なのを気にする事なく、私は遮光カーテンを静かに開けて、ホテルから見える空を眺める。

私達が泊まった部屋は最上階。
周りに建物などもなく、下着姿のままでも誰に見られる事もない。

見ているのは、空か、鳥か…彼だけだ。

「なに黄昏れてるの?」

そう言いながら、起きてきた彼が後ろから抱きついてきた。

「……黄昏れてなんかないよ、」

「……じゃあ、どうして空見てた?」

ギシ………ッ


ギシ………ッ

「……空が……綺麗だから」

ギシ………ッ

ギシ………ッ

「ふーん。俺にはいつもと同じに見えるけどな〜」

そう言った後、彼は後ろから私の頬にキスをした。

「………っ!ちょっと……っ」

「あはは、いたずら」

軋む音がする。

その軋む音は、私が鳴らしてる。

軋ませているのは私。

けれど、

この軋みの音は、決して最悪じゃない。

彼は、私を後から抱きしめたままだ。


「ねえ…」

「うん?なに…?」




「あのね、話があるの……」


軋む恋に、終止符を。


〜終〜

こちらの企画に参加させて頂きました。

山根あきらさん
道ならぬ恋の話にしました。
でも、けどね……なんて、自分で思いながら書いていました。
よろしくお願いします。


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