一等賞!(エッセイ)
「は、早い〜!!!」
私がこの時思っていた気持ち。正確には小学5年生頃の私が思っていた気持ち。
私の小学校には、学校行事の運動会と学校の校庭を使って行われる地区の運動会があった。
同じ地区の老若男女入り混じり(主に小学校に在籍している生徒とその家族)地区ごとに競い合っていく。
私はこの時に出場する事になっていたのは親子二人三脚で、父と組む事に。
お互いの片足を紐に結んでいく事になるのは皆さん知っていると思うが、私はその感覚が少し苦手だった。
何処か心許なく、父との身長差も少し怖かったし、自分の足の片方の自由が利かなくなるのも怖いと思った。
けれど、無情にも『よ~いドン!』のピストルは鳴り響く。
パーンッ!!!
私と父を始め、スタートの合図を聞いて一斉に同じ組になった親子は二人三脚を始めていく!
もはやイッチ、ニッ、イッチ、ニッなんて言ってる余裕などない。
思った何倍も父の足が速いのだ。
細身ではなくふくよか系の父。
お世辞にも若い年齢とは言えない年齢の父。
それでも、父が進ませる足の歩みの速さは、小学5年生の私のキャパを有に超え、私はそんな父に付いていくのに必死!!(笑)
この時に感じた感情を、大人になった今でも私は結構鮮明に覚えている。
怖いっ!怖いっ!
転ぶっ!!絶対に転ぶ!!
速い!!速い〜!!!!!
けれど、父にスピードを緩めて欲しいなんて言えない。だって、走りがノッてると言えばノッているのだ。
自分の足よりも何倍も速いスピードでゴールへと駆けていく。
競争している他の親子の事など目に入らない(笑)ただ、ただ私が切実に思っていたのは、自分が転ばずに父と無事にゴールテープを切ることだけ!!
『ゴーーール!!!』
……私と、父、題名でおわかりかと思うが、何と1着でゴールを決めた(笑)
気がついたらゴールしていて1着でフィニッシュ!
1着という着順は嬉しかったが、私がこの時に思っていた事は、転ばなくて良かった……だったと思う。
同じ様に私と同じ組で走っていた友達の同級生とお母さんにも、
「はやかったねー!
はかったですね〜!」
なんて言われる私達親子。
父と並んで走ったのは、この時が最初で最後だったと思うが、今でも私の記憶に残っている。
勿論、大半を占めていた感情は「怖い」
と「転ばない様に!」だったけれど。
この時の記憶は、まるでビデオテープの様に少し音をたてて巻き戻され、何時でも鮮明に映り、再生できる。
そんな、思い出。