私だけの特権 964文字#シロクマ文芸部
夏は夜明けが早いから、遅く寝てしまっても薄いカーテンからのぞく日差しが目覚ましとなって起きてしまう。
「………っ〜〜、まだ4時間しか寝てないんだけど…………」
昨日は生理前特有の不眠に悩まされ、夜は全然眠くならず、色々足掻いて見たけれど全部駄目だった。
今日は休みだけれど、ウダウダしてしまいそうな気がする。
………寝不足だから………。
スースー。
テーブルを挟んだ隣のベッドからは、同棲している彼氏の規則正しい寝息が聞こえてくる。
私の彼氏『吾妻(あずま)』とは、付き合い初めて3年になる。
普段の彼はしっかりしていてテキパキと物事をこなしていくが、キッチリさせていた髪の毛はお風呂でサラサラになり、ラフな格好のTシャツを来て寝ている彼の寝顔は、昼の彼からは想像出来ない程あどけなくて子供のような寝顔だ。
「………吾妻より早起きした時の特権」
「私の特権……。」
彼のベッドへ、自分の体を少し起こして近づける。
彼の前髪にそっと触れると、サラッと前髪が動く。
「…………………ん…………っ」
「!」
起こしちゃった?
彼の瞳が、ゆっくりと開かれる。
「………っ、もう起きたの?」
「……あっ、ごめんね。
私………夜、眠れなかったの………」
彼は、彼の前髪を撫でた私の手を優しく掴む。
「まだ早いよ。もう少し横になってなよ……」
「……横になっても、今は眠れないもの……」
「眠れなくたって良いんだよ。目を閉じてるだけで、体は休んでるらしいよ」
そう言うと、彼は掴んでいた手を離し、自分のベッドを少し開けて、トントンと空いた場所を叩く。
「おいで」
「………狭いでしょ?2人で横になったら」
「くっつけば良いんだよ。
今日はまだ暑くないし、ね?おいで」
……彼の『おいで』は、私にとっては一撃必殺と言っても過言ではない。
彼の言う『おいで』は破壊力抜群なのだ。
私は素直に従い、彼の隣に横になる。
直ぐに彼に引き寄せられ、彼の抱きまくらと化してしまった。
「無理に寝なくても、こうしてれば良いんだから」
「………………うん………」
彼の隣は安心する。
彼の体温と、息と、鼓動……生きているという事を伝える、ありとあらゆるものの動きを感じる。
彼の息遣いと体温を感じながら、私がウトウトして眠りに落ちるまで………
あと……もう少しだ。
〜終〜
こちらの企画に参加させて頂きました。
小牧幸助さん。
ありがとうございました。