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忘れっぽい詩の神 1265文字#青ブラ文学部

手を伸ばしても
届かないまま
手は空を切り続ける。

迷ったぶんだけ
爪は伸び、
その長さが月日の長さと比例する

伸ばし続ける訳にもいかないから
爪は短くまた切るけれど、
それでも爪は
また伸びる

戸惑いのぶんだけ
伸びて伸びて

月日の長さと
惑いの日々を思う

★★★
『うん。なかなか良いんじゃない?』

「アポロン様…その詩のご依頼、何年前のものですか?」

「………う〜〜〜〜ん。100年?」

「150年です!!……信じられません。忘れっぽいにも程がある!」

「だって仕方ないでしょ?毎日毎日やることはあるし、詩の依頼も沢山来るんだから。オールマイティーな神である以上、これはもう避けられないね」

彼の名は『アポロン』
ギリシャ神話に登場する神様だ。

詩歌、音楽、予言、医術などを司り人間のあらゆる知的、文化的活動の守護神。

だからといって、何百年も依頼主を待たせるくらいなら、そんな頼みを受けないで欲しいと、付き人の僕は思う。

「さて、次は……………」

我が主は、ハープを片手に持ち、また詩を創る様だ。僕は、そんな主の創作のお供に紅茶を入れようと席を立った。


そのときーーーーーーーー


『アポロン。私の依頼した詩はまだ出来ぬのか?』

我が主に詩を依頼した神様がいらした。

「う〜〜ん。君のはまだまだ…………かな?」

「何時まで待てば良いんだ?私の詩は?もう……200年待っているだが」

ガチャーーーンッ!!!!!!

「す、すみませんっ、!」

「大丈夫かい?」

紅茶を入れようと思ってカップを取った時に、思わずカップを落としてしまった。

つい、……驚いてしまって………

「アポロン様っ!!!一体どれ程のご依頼を引き伸ばしてらっしゃるんですかっ!!に、200年って…………っ


………まさかっ………200年より長い方がいらっしゃったりしませんよね?!」


「………う〜〜〜ん、どう……だったかな〜〜〜〜?」

「……………っ!!!!!!!」

まずいっ!このままでは、高貴で気高く、敬われる存在である我が主が、不名誉な『忘れっぽい詩の神』という、もしかしたらこの先の通り名になってしまうかもしれない名を付けられしまうっ!!

良いことではないっ!!

全然っ!!良いことではないっ!

「あの、主には、一刻も早くご依頼の詩を完成させる様…僕が見守って居ますので、もう少し、お待ち頂けますか?」

催促に来られた神様には優しく納得してもらい、僕は直ぐにアポロン邸と神の世界へ向けて号を発した。

「え〜〜?そんな事しなくても大丈夫だよ〜」なんて、呑気にも我が主は言うけれど、全然!大丈夫ではないっ!

「良いんですっ!これで!これが、アポロン様の存在を守るんです!!」

「?」

何故?なんて顔をしていても、僕は付き人としての信念を貫いて見せる。

とりあえず、これだけの期間なら大丈夫な筈だ。

「さあ!アポロン様、続きですよっ!!続きっ!!」

「わかってるよ〜」





『アポロン神にこれから先、詩の作成を依頼する事を、1000年禁ずる』



〜END〜


こちらの企画に参加させて頂きました。

山根あきらさん
ありがとうございました。
何だか付き人がてんやわんやの話になりました。

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