見出し画像

面接での言葉は私を流させなかった

就活生時代に面接で話せるネタを作りたいと思い、長期インターンシップに応募したことがある。よくある携帯販売の営業で、安く携帯を売れるので私の下で買いませんかといったものだ。内容自体にまったくというほど興味はなく、むしろ怪しいものだったが、就活に焦る当時の私に関係なかった。
それは周囲の人間も同様に就活のためのインターシップやセミナーに参加していたこともあるだろう。流されやすい私は「就活は何とかなる」と根拠ない考えで選考に向かった。
インターシップの選考はシンプルだった。面接を複数回こなして、適正を判断するだけ。会場は3年前にできた駅ビルの会員制のコワーキングスペース。20階にあるそのコワーキングスペースは社会人であふれている。私は1次面接にぬるっと受かり、2次面接に進んだ。1次面接では学生だった面接官も2次では社会人の男性になった。小太り気味だけど、身なりに気を使ったベンチャー企業風のビジネスカジュアル。1次同様、何気ない会話と将来のビジョンについての話を行ったり来たりしていた。仕事で身に着けたトーク力は聞きやすいもので、話す時間を苦と感じなかった。話の中盤、小太りな面接官は笑顔で将来の話を進めていた。そのスケールは就活生が憧れるような内容であり、流されやすい私は感心していた。学生をトップレベルまで引き上げる手伝いをしたい。さらにステップアップして大きな仕事を任されるようになっていきたいと。そして、「だから、仕事のために友達とは会う時間も今ではいらない」と言った。仕事のため。私はその言葉をただ笑って聞いた。でもその言葉が引っかかってしょうがなかった。
仕事をすると友達はいらなくなるのか、何のために1日を頑張る必要があるのか。そこまでしてかなえたい夢とは何だろうか。年を重ねるほど、友達はできにくくなるし、集まる機会も減っていく。それはわかるけど、今まで積み上げてきた関係性にまで手を出さないといけないのか。
少し行き過ぎた考え方になっているし、友達といっても一部の人のことだけをさしていたのかもしれない。だけどここで流されずに済んだ半年前の私に今は賛辞を送りたい。言い渡された合格を断ったことで。

#面接 #就活#エッセイ

いいなと思ったら応援しよう!