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読書記録2024②



『占星術殺人事件』島田荘司

1981年刊行のデビュー作。
40年以上前に起きた、ある小説のような手記を元に起きた猟奇的な殺人事件。占い師の御手洗の元に当時の事件関係者の親族による新たな証拠がもたらされると共に、事件の真相解明を求められる。

この作品を知ったきっかけは「金田一少年の事件簿」。
「占星術殺人事件」で出てきたトリックが使われています。
ま、本家の方では実際は違ったんですけどね。
金田一〜の方で見たときに、そんなに簡単にできるもんじゃないだろうと思いましたが。
本家は時代設定が昭和初期、暮らしの用品が現代と異なりより一層実現が難しいものでした。

いきなり始まる「手記」の悍ましい内容に驚きながら読み進めます。
占星術の専門的な用語とか細かい数字など図もついているとはいえ読みやすいとは言えないものなので、かなり時間がかかる。
また、登場人物が多く殺される人間もそこそこ多い。おまけに「手記」と実際の登場人物との名前が少しずつ異なるという記憶力泣かせもあり、前半は数ページ読んでは戻って確認することを繰り返しました。

普段、この手のものを読むとき、犯人は誰か考えながら読むことをしたことがありません。
謎解きをしたいのではなく、謎解きされていく過程が好きなのでそれを楽しむだけで精一杯。最初に犯人が分かっていて、犯人と暴く側の攻防を中心にした内容でも楽しめます。
そういう物って自分で解明したいタイプの人は敬遠されると思うけれど。

時代背景なんかを考えつつ読み進めなければ行けないので余計に時間がかかりましたが、初めにある「手記」と後から明かされる登場人物の相関図の間にある小さな矛盾をついていくことが犯人に気がつく手がかりとなっていました。作中のミスリードにも負けずに考えていれば分かる、のかもしれない。

最後の犯人による手紙で完全な真相解明がされます。手紙の文面は淡々としています。「手記」も犯人が書いたもので別の人物になりすまして書いていたことを考慮しても、同一人物が書いたとは思えないような違いがあります。40年の時間が表面のドロドロとした荒々しい感情を流し尽くし、訪れた凪のように感じました。


記憶しながら読まないとわからなくなるので頭をめちゃくちゃ使って読了後はぐったりと気持ちの良い疲労感に包まれました。

次は何を読もうかな。

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