「ロミオとジュリエット」と希死念慮
「ロミオとジュリエット」のミュージカルを初めて観た。
話の内容はなんとなく知っている程度。犬猿の仲である家族の子ども同士が恋に落ち、周囲に反対され、自ら死を選ぶ。バッドエンドで終わる物語の代表格であろう。私は、たかだか恋におち、しかも出会って間もないのに、周囲に反対されたからといって、自殺するものなのかと思っていた。まあ、ミュージカルを観た直後もそう思っていた。なんて、愚かなんだと。
しかし、少し時間が経つと考えが変わった。相手が死んだことは単なる引き金に過ぎなかったのではないかと。
話は変わるが、私は希死念慮が強い方だと思う。何か辛いことがあるたびに、遺書めいたものを書き、泡となって消えてしまいたいと思う。家のベランダから下を覗き込み「ここから落ちたらどうなるんだろう。楽になれるのかな。」と身を乗り出したことは一年のうちに片手では収まりきれず、飛び降りは怖いから溺死ならと思い、真夜中に海まで行ったこともある。死に至るまでの過程を考えてしまい、恐怖でできないことを繰り返している。
ロミオとジュリエットは閉塞された空間に嫌気が差していたのではないだろうか。ロミオはわからないが、ジュリエットは見合い結婚が決まってしまった。二人とも愛する人が欲しいと願い、一目惚れした相手がやっとできた。駆け落ちのように結婚式をひっそりと挙げた。ここではない別の場所に行くことに夢を見て、幸せの絶頂までいかないかもしれないが、希望の光が差していただろう。
その中でロミオの死を目の当たりにしてしまったら、死んでもいいと思う。希望の光はなくなり、見合い結婚をさせられる。愛のない生活が続いていく。だったら死のう。ロミオと出会わなくても、死にたい気持ちはあったかもしれない。ロミオがそのトリガーになってしまった。
ジュリエットは変えられない閉ざされた世界に対して元々、希死念慮を持っていた。ただ、ロミオの死があることで自殺をするきっかけができたのだろう。