朱に交われば赤くなる(9)

妹の部屋に入った僕(4)

僕は、着ている服と下着を全部脱いだ。
勉強机の横には、全身が写るミラースタンドが置かれている。
毎朝、妹は鏡に映る自分のセーラー服姿に微笑みながら、今日も頑張ろうと言い、通学していたと思う。
でも今は違う。その鏡には、素っ裸の僕が映っている。
まさか、鏡もこんなものが、映し出されるとは思ってもいなかっただろう。
冷静な自分がいる。

僕は一体なにをしてるんだろう。妹の部屋で素っ裸になり、無断で妹の下着を、挙げ句は、男なのにセーラー服まで着ようとしている。
それも、日本一、誰からも干渉されない安全地帯で、思う存分、女装に浸れる環境で。
これが終わったら、妹には、好きなケーキをプレゼントしよう。それが、せめての僕の罪滅ぼしだ。

僕は自分の股間を隠すべき、ショーツを手に取った。
指が、恐る恐るショーツに触わる。本体はつるつるとしたナイロン生地で、周りには美しいレースが織り込んである。
女の子は大胆にも、こんな可愛いショーツを一日中、穿いていられるんだ。
ずるい。

悪魔はここぞとばかりに囁いた。
「いいのよ、男の子のあなたがこれを一日中穿いていても。何の問題はない筈。
ただ、一つの事を除いて」

「その一つの問題点って?」

「折角の可愛いショーツを穿きながら、ズボンを穿いていたんでは、宝の持ち腐れよ。
あなたはきっとこう思う。
スカートを穿きたい。
それも、うんと短いスカートを。
いつ、ショーツが皆に見られてしまうのか、そのドキドキ感にみまわれながら、外を歩いてみたい。

ビルの間の容赦ない強風区間。
階段、エスカレータを上りながらの下からの遠慮なき視線。
電車に乗り、男性からのスカートの中を透視するかのような、ねっちりとした視線。
それもどれも、スカートと可愛いショーツをを穿いているからの洗礼。
どちらかがないなら、意味はない。
スカートが捲れてしまって、可愛いショーツが見られてしまうってどんな感じんだろう?
恥ずかしいのはなんとなく解る。

悪魔は囁く。
「それは、それは、女の子にとっては、穴に入りたくなるぐらいの恥ずかしさよ。
そして、男の娘にとっては、その恥ずかしさは最高の瞬間なのよ。

意識を現実に戻した。
この、つるりとした生地が、僕の股間を包み込むと思うと、ドキドキ感が半端ない。
妹の穿いていた下着を兄である僕が身につけると言う背徳感が心臓を締め付ける。
片足づつショーツの中に脚を通し、膝から上にゆっくりと、太ももにショーツを這わせる。
まるで、女の子のように。
しかし、この時、ショーツは驚いたに違いない。いつもの、持ち主とは違う股間の突起物に遭遇したから。
僕は、その突起物をなだめながら、無理矢理、ショーツの中に押し込んだ。
突起物は、いきり勃ちながら、なんとか所定の場所に収まった。

次はブラだった。
男性にとっては、至極、扇情的な、古代人にとっては、ただの布切れにすぎない。
教えて欲しい。いつから、このただの布切れが、男を狂わせる存在に至ったのかを。
僕は、背中のホックと格闘しながら、なんとかブラを付け終えた。
女の子は毎日このブラの締めつけを感じながら暮らしているんだ。
僕も慣れる事が出来たら、つけてもいいんだろうか。

スタンドミラーには、僕の下着姿が全身で写っている。
髪もさらさらの長髪で、まるで女の子が鏡に写った自分をうっとりと見ているようだ。

恥ずかしい。・・・
そんなに、恥ずかしいんだったら、着なくてもいいのに。
と言う人は確かにいるだろう。
でも、僕は信じている。この、僕の小説の読者に限っては、揺るぎない共感があるものだと。
下着姿に名残り惜しみつつ、ベッドに散乱するセーラー服を手に取った。
女の子の下着を着た後は、セーラー服を着る、ごく自然な事だ。
僕は、あくまでも、この一連の流れに沿っている。
スカートを手に取る。紺の襞スカートだ。ズボンに比べ丈が半分ぐらいしかないのに、まず驚く。
そして、思ったよりも、重いのに気付く。まるで、鎧のようだ。
スカートはジッパーが開いているので、脚を入れる開口部は広く、どうぞ、脚を入れて下さいとばかりに、待ち構えている。
スカートを太ももあたりから、上に上げる時、白のレースのショーツが目に入り僕は今女の子なんだと思い知らされる。
女の子は、毎朝、こういう着替えをして学校に通っているんだ。
男の僕にとっては、憧れ、そのものだった。
スカートを腰まで上げ、腰のフックを掛ける。サイズは少しきついが大丈夫だ。
スカートのひらひら感が楽しい。ジッパーをショーツに食い込ませないよう、ゆっくり上げる。
そして、ジッパーが真正面では、おかしいと思い、
スカートをウェストの抵抗にあいながら、左の腰にずらす。
ズボンとは全然違う所作だ。
新鮮だ。
女の子は毎日、こんな事を体験しているんだ。
ずるい。
腰の周りが襞スカートで包まれる。
僕の穿いているショーツは、一応、スカートで守られている。で、でも、・・・
少し動いただけで、スカートが揺れる。
もし、この状態で、男の人の前に立ったなら、・・・
男の人は簡単に僕のスカートを捲ることが出来る。
僕は、それを、望むようになるんだろうか。

次は上着のセーラー服だ。
形から、上から被るんだと分かる。
両手を袖に入れ、頭を入れる。
かなり、窮屈だ。
着る途中で、胸のブラが嫌がおうにも視線に入る。
女の子にとってはごく自然な事だ。
ふ〜、なんとか着ることが出来た。
ふと思った。これって、着ることは出来たけど、脱ぐ事は出来るの?
汗を吸い取った布地は肌に密着して脱ぎにくいかも。
想像してみる。・・・

妹は、どうしても脱げなくなった僕のセーラー服姿をあきれたように眺め、泣きすがる僕にこう決断を下すかも。
「も〜、最悪、お兄ちゃん、一生、セーラー服着てたら」

鏡には、セーラー服姿の僕が写っている。
僕は、ドレッサーの上のブラシを手にとった。
さらさらと、髪を梳く。
鏡の中の、まごうことなき、セーラー服の少女は、人生の中での、一番の恍惚感に浸っていた。
あ〜、いつまでも、このままでいたい。
と同時に、襞スカートとショーツの中の一物は、この興奮に耐えきれず、既に限界を超えていた。

その時、
ガチャ、ガチャ、と
扉から音が聞こえてきた。

と同時に妹の独り言が、
「あれ、おかしいな、今日の朝は忙しかったから、鍵かけずに家出たと思ったんだけど。なんで、鍵がかかってるの?

どうやらこのドアは、中からロックしてあっても、合鍵があれば外から解錠するのは、造作ないようだ。

妹は怯えながら口にした。
「だ、誰?」

もし、そこに、屈強な強盗でもいたら妹は即、部屋から脱出し、警察に連絡していただろう。
しかし、そこにいたのは、セーラー服を着た、兄に似た少女だったのだ。

僕は妹の下着とセーラー服を着た自分の姿を、妹にまじまじと見つめられている。

とてつもない、今までに経験した事のない、とんでもない、興奮の波が押し寄せる。

妹は少し考えた後、
僕に、思いっきり強烈な グウ パンチをした。・・・

・・・・・
僕は長い眠りから覚めた。

目覚めると机にうつ伏せた状態で自分の部屋にいることに、ぼんやりと気付いた。
ゆ、夢だったんだ。
現実じゃなかったんだ。
僕は、ほっとした。
確か、机の前で予習準備に取り掛かり、これから、妹の部屋に雑誌を取りに行こうと思っていたんじゃ。

それより、
僕は、下半身の違和感に気付いた。

指を股間部分に触れると納得した。
僕は、久し振りに、夢精していた。


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