朱に交われば赤くなる(11)

いやだ、いやだと言いながら

僕は、先生にモデルの人がいつも使う更衣室(女性用)に連れ込まれた。部屋には移動式ハンガーがあり、様々な衣装が掛かっている。
ワンピース、お姫様ドレス、ウェディングドレス、メイド服、女児服、ロリータ服、OL制服、OL通勤服、振り袖、町娘、拘束具。「えっ、モデルの人はこんなものでも着るの?」

先生は答える。
「なに言ってるの。当たり前よ。プロのモデルだもの。
特に振り袖は着付け教室に通って、講師の免許も取得しているわよ。プロのモデルがこの衣装は着れませんとは口が裂けても言えない。
でも、拘束具に関してはいくら私でも知らないけど」

僕はめまいがした。
そして、先生は一番奥に掛かったハンガーを外し、僕に差し出した。
それは、見覚えのある服だった。
紺地に白襟のセーラー襟、紺の襞スカート。折り目正しい標準丈のスカートは、クリーニング後のビニール越しからもその清純さが見てとれる。
クラスの皆が着てる、ごく普通の女子の制服だ。僕はごくりと生唾をのんだ。

「ほ、本当にこれを僕が着るの?」
「当たり前でしょ、あなたはモデルなんだから」

「ほ、本当にこれを僕が着るの?」
「しつこいわね。嫌だったら私が着るから」

僕は着る覚悟を決めた。

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