遠くまで来てしまったなぁ……と子供時代を恋しがる日
あの頃は幸せだった。
恵まれた小学生時代。色々あったけど、今思えばあの頃が1番幸せだった。
朝は母が起こしてくれて、朝ごはんを作ってくれてて、帰ったら宿題をして遊んで、夜ご飯も母の美味しいご飯を食べて、好きなテレビを見て寝る。幸せ以外のなにものでもなかった。
あの頃はなんにでもなれて、どこへでも行けた。無限の可能性があった。純白の、なにも描かれていない、汚れを知らない地図。未来に拓かれた希望。大きな夢を見て、それが叶うと信じていた。自信もあった。でもそれは無知だったから。
それらが幻だったのか私が間違ってしまったのかは分からないが、そんな輝いていた日々を背に、大人になった私は未だに迷子になっている。目的地が分からないのだ。あの頃キレイだった地図は泥だらけ傷だらけで使い物にならない。
どうすればいいか分からないけれど止まれない。止まるわけにはいかない。時間に置いていかれてはいけない。目標を見失うわけにはいかない。前を向かないと。進まないと。
だから私なりに走ってきた。
でもやっぱり上手くいかない。そんな毎日。
ふと懐かしんだ。「あの頃」。
「あの頃は……」と思い出すととても寂しくなった。
“あの頃”は過去でもう戻らない。
“あの頃”の自分も戻らない。
私は同じはずなのに、変わってないはずなのに、随分変わってしまった。随分傷ものになった。それを「汚点」と呼ぶか「勲章」と呼ぶかの問題だ。
随分遠くまで来た。
でもまだまだ道半ばだ。