【連載短編】『白狐』1
自転車で通学しているせいで、いつも風向きを気にして走る癖がついてしまった。自転車を漕ぐ人にとって、向かい風か追い風かは目的地に到着した時の体力の残量に大きく関わる。母親にこのとこを話すと、「若いうちからそんなこと言っててどうすんの?」と軽くあしらわれた後、自分の身体が若い頃に比べていかに老いたか、それに比べたら高校生の俺の体力がいかに有り余っていて、それがいかにありがたいことなのかについて長いスピーチを聞かされる。それでもやっぱりこの主張は譲れない。
幸い今日は追い風だ。