見出し画像

短編小説「別杯」11

 一か月後、また三人でウォーキングを再開した。相変わらずおしゃべりをしながらの散歩会である。
 一時間ほどあるいて、出発した青空公園に戻る。すぐ解散するはずはない。三人ともいつもの喫茶店に足が向く。
 たわいのない会話の中で、ふと蛭間さんが、
「ところで、鈴木さんは北海道えりもの出身だよね。その後夕張に転居したと聞いているが。以前、えりも時代のことを聞いたから、夕張時代のことを話してよ」と私に言ってきた。
 榎さんが、「そうだね。今日は、鈴木さんの夕張時代の事を聞こう」と、同調した。
「お互い時間を持て余しているので、ゆったり聞こうかね」と蛭間さんも身を乗り出す。

 私は、記憶の針を夕張時代に巻き戻した。しかしずっと昔の事。必死に記憶をたどり、話し始めた。話しはじめると最近の出来事よりもはっきりと思い出すものだ。この年になると、遠い昔の記憶が鮮明に思い出す。
 私(鈴木)は、徐に話しだした。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?