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熊雄(連載⑤)

 熊雄が七歳の時の春、父親の達雄は熊雄を連れて家の裏山にタケノコ(ネガマリダケ)採りに出かけた。
 朝九時ごろ、二人は握り飯を担ぎ山に入った。達雄は昔からこの山のことは良く知っていた。自分の庭のようなものであった。
 タケノコはまだ時期が早いと見えて、昨年採れていた場所にもあまり生えていなかった。
 この年から熊雄は小学一年生になった。学校でも熊雄は奇異の目で見られた。
 熊雄の母親のヨシは大層気にして熊雄の顔や手をバリカンで刈ったことがあった。がしかし、すぐにまた黒い毛が生えてきた。
 当の熊雄は一向に気にしていないと見えて、学校でもニコニコと振舞っていた。学校の先生もそうした熊雄の態度を見て、(この子は図太い性格だ)と胸をなでおろしていたのである。

 人間は本来生まれ落ちた時から皆平等な存在であるはずだ。体中が黒い毛で覆われているとしても人間として変わりはない。
 普通と違う姿だからといって奇異な目で見るのか。ある面、社会の仕組みが健常者を中心としたかたちだからこそ、そこから蔑みや嫌悪などの排斥的な考えが生じる。
 そのような社会の仕組みを変えていかなければ、と達雄とヨシは語り合った。
 この年の冬は例年に比べ雪が多く、雪解けが半月も遅れた。
 北海道の太平洋側は冬、風は強いが、雪は日本海側に比べ少ない。


 

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