襟裳の風#8
私の家のそばに、トンネル(隧道)がありました。
そのトンネルの上の岩場には高山植物のガンコウランが群生していました。
その実を採って食べたら甘酸っぱく、美味かった記憶があります。
ただ、崖の上まで登るのが非常に怖いのです。足が竦んで、登れず途中で諦めました。
そしてある晩、夢を見たのです。それも怖い夢でした。
高いところから飛び降りる夢だったと記憶しています。本当に怖くて勇気が出ないのです。一歩が出ません。そして目が覚めました。
ぐっしょり汗をかいていました。いまだに高所は苦手です。
夏のある日、トンネルの先の岩場に、鯨の死骸が打ち寄せられたことがありました。
腐敗した臭いがしました。ドデカイ鯨でした。マッコウクジラだったようです。
ゴメ(カモメとも海猫ともいう)が群がり、人も群がりました。
庶野からも目黒からも人が集まってきました。
クジラを、その後どうしたかは記憶にないのです。
二~三日で、その鯨の死骸は無くなったと思います。