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【連載】しぶとく生きていますか?⑦

 我が家に戻った茂三家族は、クジラの肉を食べた。美味しかった。
「母さん、うめえな」と茂三は妻の淑子に、焼酎をぐいと引掛けながら話すのであった。
「あんた、顔の傷にさわるから、あまり飲んだら駄目だべさ」と言いながら、調理したクジラの肉を眺めながら嬉しそうに茂三をたしなめた。
「おれも少しもらっていいか?」と一茂が箸をだす。
「ところであんた、明日は早くに庶野に行くんだべ」淑子がクジラの肉を頬張りながら茂三に聞いた。
「トラックの運転手の話しでは、まだヒグマが見つかっていないと言ってたから、明日朝一番に庶野にいく」と茂三が話す。
「そうしたほうがいい」と淑子が返した。
「父さん、ところでトラックで運んだクジラの肉は、どこに行くんだべか」と一茂が父親に聞いた。
「腐りかけていた肉もあるから、人間が食べる分と、家畜の餌に分けるんでないべか。人間が食べる分は、庶野の漁撈長が判断するべな」と茂三は言うのであった。
 

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