【連載】しぶとく生きていますか?㉗
茂三と松江は毎日、その仮設住宅からフンコツまで通った。
フンコツの家があった場所に小さな昆布小屋を建てた。松江と共同で使う小屋である。
その小屋の完成が目前に迫ったある日の朝、茂三と松江が仮設住宅から自転車でフンコツに向かっていた時、キタキツネが黄金道路の砂利道をうろついていた。よく眺めると、キツネが一匹、道路の真ん中で横たわりびくともしないのである。その周りに二匹の子ギツネが啼いていた。
二人は、自転車を止めそのキツネに近寄った。
母親と思われるキツネは既に死んでいた。車に轢かれたらしい。内臓が飛び出し、惨たらしい姿だった。
二人は、その轢かれたキツネを道路わきに移動し、たまたま自転車に積んでいたケンサキで穴を掘り、埋めた。
残った二匹の子ギツネは埋めた周りをうろつき、暫く啼いていた。みるに見かねた松江が、
「茂三さん、この子らをフンコツの昆布小屋に連れていくべ」と言った。茂三は反対する理由も無く、自転車籠の中にその二匹を入れ、運んだのであった。
「午前中の昆布拾いと、小屋の普請は中止だ」と茂三が言った。
まずは、その二匹の子ギツネの住む小屋の製作に取り掛かった。
そして昼前には、立派な小屋が出来上がった。昆布小屋の横に設えた。そして逃げ出さないように小屋の周りに高さ二メートルもある金網を四方に渡し扉も付けたのである。二匹の子ギツネは腹をすかしていた。二人は、ありあわせの食べ物を二匹に与えた。するとすぐに平らげてしまった。そしてまた欲しいとねだるのだった。
この昆布小屋には流しもついており、寝泊まりもできるようになっていた。
その日は、午後から茂三と松江は海に入り、昆布採りに精を出した。採ってきた日高昆布を玉砂利の上で干すため、並べた。その作業が終わったのが夕方近く。明日の午前中まで一晩干す。そして乾燥した昆布を浜から小屋に運び入れるのだ。
二人はその晩、昆布小屋で一泊した。次の日も晴天のようだ。夜空の星々が綺麗だった。