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ビリーヴ!〜シー・オブ・ドリームス〜は最高傑作か?

東京ディズニーシーで2年ぶりに導入された夜のレギュラーショー「ビリーヴ!〜シー・オブ・ドリームス〜」を観てきました。
今回は、初めてビリーヴを観た感想を正直に綴ります。

これまでの積み重ねがあってこその規模感

11/11の初日は大混雑だったビリーヴ。
混雑がある程度落ち着いた11/24に、ディズニープレミアアクセスを利用して鑑賞してきました。

巨大なバージから放たれるサーチライトや噴水、ショー全体に迫力を加えるパイロ、ホテルミラコスタの壁面をいっぱいに使ったプロジェクションマッピング。特殊効果を多用した、東京ディズニーシー史上最大規模のショーだと思います。

ビリーヴに登場するピーターパン達

ファンタズミックをリニューアルしても良かったけど・・・

率直な感想は、運営会社の本気を感じるショーだということ。ファンタズミックに新場面を加えるなどしてリニューアルさせてもよかったとも思いますが、さまざまな技術を用いた全く新しいショーに切り替えたことは正解だったと思います。ファンタズミックよりもファンタジー色が強くなり、2024年開業を予定する新エリア「ファンタジースプリングス」に繋げる布石としても大きな意味合いがあるショーだと感じました。

手の込んだ演出とダイナミックな特殊効果は過去のショーの積み重ねがあってこそ。近年公開された映画作品の要素をたっぷりと盛り込み、プリンセスやディズニーの仲間たちも次々と登場して、満足度の高いショーに仕上がっている印象。「ダイナミックさ」や「ボリューム感」はファンタズミックと同等か、越えていると思います。加えて、MISIAさんの歌うテーマ曲は「レジェンド・オブ・ミシカ」を想起させます。

惜しまれつつ幕を閉じた「レジェンド・オブ・ミシカ」

ショーの最中は次々と登場するキャラクターと物語に興奮の連続。ゲストは映画の名場面を振り返り、物語の主役たちと共に映画の世界を追体験します。それぞれの作品に思い入れのある人にとってこのショーは「感動との再会」となると思います。また、迫力ある演出は、たとえファンでなくても楽しめるものだと感じました。

不明瞭な物語展開に振り回される

しかし振り返ってみると、ディズニーシーシンフォニー、ブラヴィッシーモ、ファンタズミックなど、過去の夜のショーにあった没入感は薄かったように感じます。物語の展開に自然と身を委ねるような感覚はありませんでした。

複数の作品を織り交ぜながら一つのクライマックスへと進んでいく演出は、ファンタズミックのまた一歩先に駒を進めたなという印象。しかし、複数の映画作品の物語と音楽を重ね合わせて進行する影響か、過去の3つのショーと比べると物語の起承転結が不明瞭だと感じました。

場面の切り替えがとても早く、次々にキャラクターが登場するので「ショーの展開に振り回される」というような感覚がありました。また、同じキャラクターが何度も登場するのも、不明瞭さに輪をかけていると感じました。そして、キャラクターが複数のバージにランダムに登場する印象があるので、「次はどこを観たら良いかわからない」という場面も多々ありました。せっかく導入したプロジェクションマッピングも、それ自体がなくてもショーが成立する構成なので、活かしきれていないようにも感じられました。

ディズニーシーシンフォニーは中央に立つミッキーが進行役を担い、短時間でしっかりまとめられていた。

二作目のブラヴィッシーモは、火と水という東京ディズニーシーにある要素をうまく使って、恋に落ちた火と水の精霊が出会う瞬間に向かって緊張感が高まっていき、最高潮の最後を迎えた。

三作目のファンタズミック!は、ミッキーマウスを主役に据え、彼と共に夢の中へ迷い込み、マレフィセントとの戦いの末にエンディングを迎えるスリル感やストーリー性があった。

ブラヴィッシーモ!

今作ビリーヴは、それぞれの映画作品の主人公たちの記憶の断片が次々と描かれていきます。複数の映画作品の名場面をいいとこ取りをしたような進行と、あらゆる特殊効果を組み合わせた演出、そしてシーならではのハーバー全体をうまく使った一体感のある空間づくりは素晴らしいと思います。一方で、終始クライマックスが続いているような迫力ある演出が続き、平坦な印象。てんこ盛りにしたが故にどこにショーの山場があるかよくわからなかったように思います。

そしてストーリーテラー役として登場するピーターパンの存在感が薄すぎるのも気になります。彼が登場するのはオープニングと、中盤の一場面、エンディングの3回。場面の切り替わりで都度ピーターパンを登場させて、ゲストを次の物語へといざなってくれたら良かったかも。ピーターパンのセリフにも疑問が残ります。ミッキーとミニーの語りは取ってつけたような印象がありますし、ディズニーの仲間たちが突然登場するのも無理矢理感が否めませんでした。

だからといって手抜きのショーではなく、素晴らしいショーに仕上がっていることは確か。多くの人を満足させるとは思うので、一見の価値はあります。

「噛むほど味がする」を目指したのかもしれない

ポルトパラディーゾの港町の広大な空間を余すことなく生かしたこのショーは、観賞場所によって見え方が違うのが面白いところ。

複数のバージに色々なキャラクターが登場しますし、鑑賞場所からプロジェクションマッピングが見えるかどうかによっても楽しみ方が変わってきそう。ミッキー広場、ザンビーニブラザーズリストランテ側、フォートレス側、リドアイル、ポンテベッキオ側など、どこから観てもそれぞれに違った表情が楽しめそうです。

「どこから観ても楽しめる」「場所によって見え方が違う」という点で、何度観ても新しい発見があるようになっていると思います。

また、ファンタズミック以上に映像を多用しているので、コンテンツの入れ替えやリニューアルも視野に入れているのかもしれません。この点は、今後に期待が持てます。ある程度客足が落ち着いてきたところを見計らって新しいシーンを加え、DPAやバケーションパッケージの収益につなげることも考えているのかも。

ファンタジースプリングスへの布石

東京ディズニーシーでは2024年、開園以来最大規模の再開発エリア「ファンタジースプリングス」の開業を予定しています。おとぎの世界を描いた「東京ディズニーシー版ファンタジーランド」とも言えるこのエリアには、往年の名作ピーターパンや、近年大ヒットしたアナと雪の女王、塔の上のラプンツェルなどの要素が一つの広大なエリアに広がるようです。

ビリーヴはピーターパンを主役に据え、エルサ、ラプンツェルも登場します。運営会社としては、このエリアへの期待感を高める目的もあるのでしょう。

東京ディズニーシーが大切にしてきたもの

世界で初めて海をテーマにしたディズニーパーク「東京ディズニーシー」。
ディズニーキャラクターやウォルトディズニーの映画の精神に触れられるディズニーの「ファミリーエンターテイメント」の精神を受け継ぎつつも、「キャラクターに頼らない」という点でディズニーランドとは一線を画すテーマパークでした。
海にまつわる伝説や物語、異国情緒を感じさせる本格的な空間を大切にして作られたこのパークは、世界で最も美しいディズニーパークとして、多くのファンに愛されてきたと思います。

東京ディズニーシーアクアスフィア

エントランスに入ると巨大な地球儀が出迎え、向かった先に広がるポルトパラディーゾの広大な景色を見た瞬間、これから始まる旅への期待感が高まります。私たちは旅人になって、20世紀初頭のアメリカの港町や、昔の人々が描いたレトロフューチャーの港町、危険が潜む未開の奥地、アラビアの街並みに海底世界、そして地球の深部を探査する旅を続けます。
夜、これらの世界を一周してたどり着いた先には、再びポルトパラディーゾの港町が広がります。この港町で展開される夜のショーは、この旅を締めくくる存在でもありました。
2024年に開業を予定する「ファンタジースプリングス」は、この「東京ディズニーシー」という物語に、どんな変化をもたらすのでしょうか。

11/11にスタートした「ビリーヴ!~シー・オブ・ドリームス~」は、東京ディズニーシーで過ごした旅のひと時を、ファンタジーでいっぱいの世界観で締めくくります。おそらくこのショーは「ファンタジースプリングス」が開業して初めて完成するのだと思います。

テーマパークには再開発がつきもの。顧客満足度を維持するために、常に新しいものを提供し続ける運命にあります。近年の運営はどうも運営会社の思惑がゲストの期待より優先されていると感じることがあります。ディズニーテーマパークは世代を超えた"あらゆる年齢の子供たち"が楽しめる「ファミリーエンタテイメント」の世界。東京ディズニーリゾートにはその精神が今でも息づいているものと信じたいと思います。

パークの今後の方向性を示すような内容の「ビリーヴ!〜シー・オブ・ドリームス〜」は、東京ディズニーシーが向かう未来を良くも悪くも予感させるものでした。

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