「エウレカ(我発見せり!)」
今や課題研究は多くの高校で採用されています。先鞭をつけたのは総合学科高校ではありますが、教育における有効性を多くの教育者が認め、また時代の要請でもあるわけです。
次期学習指導要領では育成すべき資質・能力が三つの柱で示されています。
① 何を知っているか、何ができるか(個別の知識・技能)
② 知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力など) ③ どのように社会(世界)とかかわり、よりよい人生を送るか(主体性・多様性・協働性・学びに向かう力・人間力)
特に③の力が強調されています。言い換えると①はKnowledge、②はSkill、③はMind(Motivation、Passion)です。人生を生き生きと生ききるうえでの3要素ですね。これら3要素を統合した取り組みが課題研究だと思います。いま、人工知能が多くの既存の職業を代替し、人間はより創造性を発揮しなければならない、と国や産業社会の危機感から生じたプレッシャーが学校教育に押し寄せています。物質的豊かさを享受する現代社会を維持する上で仕方がないことかもしれません。しかし教育は公(おおやけ)の側からだけで語るものではありませんね。
研究の過程でゼミ教官となった先生と個別指導の時間があったと思います。かつて学問といえば有史源流をさかのぼれば師のもとに学びたい徒が集まり対話をしていました。哲学の始祖といわれるソクラテスは問答をしながら学徒を揺さぶり、学びに向かわせていました。産婆法と言われますが、そこで知ることの面白さと、知ることの責任、そして得た「知」をどのように自分自身の魂の栄養分とするのかを繰り返し問いかけました。(あれ?なんでいきなりソクラテスの話題なのでしょう。40数年前、私が高校1年生の時、夏休みの課題は『ソクラテスの弁明・クリトン』 久保勉訳 岩波文庫を読んで論文を作成することでした。今それが蘇るとしたら高校教育恐るべし!)
今、平成16年2月25日に発行された課題研究論文集(1期生)を懐かしく読み返しています。研究後の生徒アンケートでは「課題研究は自信や成長につながると思う」79.5%とありました。ネット検索していくと分かった気持ちなります。しかし、別のページでは異なる見解もあり話題も拡散しています。書籍は著者の思想全般が示されるがネットでは文脈が分からないことも多い。本当に「知る」こととは何なのかだんだん分からなくなる。めまいがしそうだ…、とは生徒の一感想。しかし、皆さんはとにもかくにも疑問や課題に向き合い、自分を納得させ、他者にその論を問い、表出するこの課題研究と格闘しました。すばらしい。その出来はどうあれ活字として残った論文が真価を発揮するのは10年後、20年後…と私は確信しています。
※Eureka(エウレカ)はギリシャ語に由来する感嘆詞で、何かを発見・発明したことを喜ぶときに使われる。古代ギリシアの数学者・発明者であるアルキメデスが叫んだとされる。