ゴミ収集車の事故に思う。

ニュースを見る時間も無い日々だが、半年~1年ほどの間に「ごみ収集車が子供を撥ねた事故」が何件も発生していたと思う。
とても痛ましい事故だと心を痛めると同時に、パッカー車(ゴミ収集車)に近付いたら危ないよなとも思う。

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僕が日雇い仕事を始めて2年。僕もゴミ収集車の作業助手として幾度かパッカー車に乗った事がある。

まず、ゴミ収集車は殆どが民間企業に委託されている仕事だ。
市によって違う事だが、僕の市では7割ほどが民間企業に委託されているらしい。基幹インフラ事業だが公務員の仕事ではない。よってゴミ収集をやっている会社は複数ある。

作業員はパッカー車のドライバー、横乗り(ゴミ袋をパッカー車に放り込む人)、そして横乗りの人の作業助手の3人。ゴミの少ない地域では助手のいない2人、場合によってはドライバー1人という事もあるらしい。

大体の場合ドライバーはその民間企業の社員で、横乗りは社員または直接雇用のバイトや準社員、作業助手は派遣会社やタイミーという事が多いようだが、これも地域差があるだろう。

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僕は市内の3社と、隣の市の1社で、日雇いで働いた事がある。
会社が違っても作業内容は殆ど同じだ。

朝8時半に作業スタート、ひとつひとつゴミステーションにパッカー車を走らせ、横乗りと作業助手がゴミ袋を回収、終わると次のゴミステーションに移動する。
「燃えるごみ」の日の場合、生ゴミが多いのでゴミ袋は非常に重くなる。プラ等の「資源ごみ」の場合はゴミ袋が軽く作業が楽な場合が多い。

次のゴミステーションが近い場合、横乗りと作業助手はパッカー車に乗らずに走って移動する。パッカー車に乗ったり降りたりする時間を節約する為だ。

ひとつひとつゴミステーションを廻る作業は、パッカー車のゴミ積載容量が一杯になるまで続く。出されるゴミの量は日や時期によって異なるので、ゴミステーションを廻る巡回経路のキリの良いところで作業を一区切りする。

ゴミが一杯になったパッカー車は、処分場に行く。焼却施設か廃棄場で積み込んだゴミを処分したら、再び巡回経路に戻って作業の続きをする。

途中で1時間ほどの昼休憩を挟んだ後、おおむね午後3時前後に作業は終了する。
作業は複数のパッカー車によって行われるので、早く作業が終わったチームはまだ作業が終わっていないチームの応援に行く。

全ての作業が終われば会社に戻り、バイトや派遣は日給を貰う。
時間給ではないので作業が早く終わるほど利率が高くなるが、定時より遅くなればきちんと残業代が付く。

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「ゴミ収集」のバイトは汚いイメージがあるだろう。
実際、パッカー車後部のホッパー(ゴミを入れてプレスする)から生ゴミの汁が噴き出す事もしばしばで、その汁の臭いは強烈だ。

しかし密かに人気の仕事でもあって、好んでゴミ収集の仕事を求める人も多い。

人気の理由は「大変なバイトだが楽でもある事」だろう。

ゴミ収集の作業自体は、重いゴミ袋を大量に持ち抱えてパッカー車に放り込む肉体労働で、地域によっては次々とゴミステーションまで走り回らなければならない。
しかしパッカー車がゴミで一杯になれば、処分場に運ぶ時間は何もする事はない。ドライバー任せで処分場を往復する時間は、瑣末な作業はあるが殆ど休憩時間となる。

また作業も早ければ昼過ぎの2時や3時で終わるので、早く帰れる。
遅くても定時を過ぎる事は稀で、その場合は割り増しの残業代が付く。

なので、ゴミステーションを駆け回る体力がある人にとっては簡単に稼げるアルバイトとなり、人気があるようだ。

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ただし「楽に」稼げるとも言い難い。

ゴミ収集は野外作業なので雨風や季節で大変さが激変する。
夏の暑さでの熱中症リスクは非常に高いし、冬の大雪なら定時で帰れる可能性はきわめて低いだろう。雨の中を汗だくで走り回る事もしばしばだ。

また3人1チームの場合、3人だけで1日中働く事になるので、人格の悪い人や相性の悪い人と組む事になれば一日中イライラする事になる。
この問題はゴミ収集に限らず現場仕事ではよくある問題なのだが、定職・本業で現場仕事をやっていない派遣やバイトにマトモではない人がいる確立は普通の仕事よりも高い気がする。あからさまに問題があるような人でも当たり前の顔をして現場作業で働いている事もしばしばという世界なのだ。

そしてこれもゴミ収集に限った話ではないのだが、作業のスピードを常に求められる。その速さが無駄であっても、だ。

特にゴミ収集は「全部のゴミステーションのゴミを集めないと帰れま10」という仕事だ。
先述の通り早く仕事が終われば早く帰れる事も多い。なのでゴミ袋をパッカー車に放り込むスピードさえ「作業が遅い!」と怒られる事になりがちだ。

確かに無駄な動きを減らし作業スピードを早くすればメリットも多いのだが、その苦労も「パッカー車が処分場に向かう途中で渋滞が発生」しただけで全て無駄になる。

そもそもサボらなければ定時には作業が終わるようなルート設定になっている筈で、そうでないのならルート設定の段階で間違っているに過ぎない。

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もちろんサボるような仕事の遅さでは問題だが、急ぎすぎてもメリットは殆ど無い。
しかし現場仕事の殆どは「仕事が早いほど有能」と勘違いしている人ばかりだし、ゴミ収集は特にその傾向が強い。

なので…ゴミ収集ルートを秒単位で急いで作業して廻っているパッカー車に、そうとは知らない子供がうっかり飛び出してきても、必ず回避できるとは限らない。

故に冒頭に書いた「ごみ収集車が子供を撥ねた事故が何件も発生」する事になっている原因だと僕は思っている。

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これもゴミ収集に限った話ではないが、現場作業の車は助手席に乗っている人が走行時の周囲の安全確認をする事が常だ。
なので基本的には左折時などで子供を撥ねるような事はありえない筈なのだが、現実にはそういった痛ましい事故が幾度も発生している。

その原因は「無駄な作業スピード重視」の風潮にあると僕は思っている。

しかしどの現場でも「作業が早い=仕事が出来る」という信仰を狂信するベテラン作業員ばかりで、事故を減らすよう少々気をつけたところでさほど改善はしないのでは?とさえ思っている。

この話題の結論としては「ゴミ収集のパッカー車とか、現場作業のハイエースとか大型車両とかには、子供も大人も近付かないほうがいい」となる。

もちろんマトモな現場作業員のほうが多いが、マトモじゃない作業員も当たり前に働いているし、誰もがスピード重視で無駄に急いでいるのだから、事故が起きる確立は下げようが無いのだ。

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