セイコー生へ 〜イトーヨーカドー東北撤退からわかること〜
横浜国立大学 経営学部に入ると
「社史」を徹底的に学ばさせられる。
パナソニック、昔は
ナショナル、松下電器
とう名前だったけども
創業者 松下幸之助の生涯とか
三菱財閥をつくった
岩崎彌太郎の生涯とか
徹底的に勉強する。
高校までで習う
日本史、世界史とは
また違って
「その会社にこんな歴史が?」は
人間くさいドラマがあって
勉強していて
面白かった。
またワタシが
弘前大学 教育学部をやめて
横浜国立大学に入り直した
1998年は
「あの、ダイエーがいよいよヤバいらしい」
というウワサが
ニワカに流れ始めた頃だった。
その少し前には
青森県 弘前市にも新規出店してた
頃だったが、あの時点で
「あ、こりゃコケるわ」
と思ったものである。
ダイエーが潰れて
イオングループの子会社になってから
20年以上たってるので
現役の青森高校生らには
ピンとこないだろうから
セイコー生むけに。
太平洋戦争が終わって
まだ混乱期の最中、
東京の北千住のヤミ市から
誕生したのが
イトーヨーカドー
神戸 三宮のヤミ市から
誕生したのが
ダイエー
である。
コンビニ大手の
セブンイレブンの親会社が
イトーヨーカドー
ローソンの親会社が
ダイエー(いまは三菱商事に売却済)
というのも
面白い。
とにかく
この2社は強烈なライバル同士で
長年、潰し合いをしてきた。
弘前市の
イトーヨーカドーから
目と鼻の距離に
ダイエーが出店したのは
偶然ではない。
とはいっても
弘前に出店してから
10年もたず
ダイエーは
親会社が潰れ
創業者 中内功 が会社から
追い出されるわけだが。
なぜダイエーが潰れたのか?
ローマ帝国衰亡史ではないが
この問いも面白い。
直接的な原因は
バブル崩壊による
土地価格の下落である。
ダイエーの経営戦略は
ひたすら
「拡大路線」であった。
終戦からバブル崩壊まで
日本国内の土地の値段って
上がり続けてたわけでして。
だから銀行から借金してでも
新規出店してれば
必ず元はとれる
必ず儲かる、っていう
黄金の勝利方程式があった
ワケですよ。
バブルが崩壊して
土地の値段が下がりはじめて
この必勝法は通用しなくなった。
持っている自社店舗の資産価値が
下がり始めると
それが経営を圧迫する。
弘前市にダイエーが
出店してた時点で
その兆しは出ていた。
当時のダイエーが
抱えていた
有利子負債
つまり借金の額は二兆円!
大甘に利率を5%としても
年に借金の利子かえすだけで
1000億円かかる。
「こんなんで会社やっていけねーだろ」
って
バカでもわかるハナシである。
というわけで90年代後半から
ダイエーは
持っていた球団
ダイエー ホークス を
ソフトバンクへと手放し
大手バーガーチェーン
ウェンディーズを
売却して手放し
プランタン銀座も
手放し
グループ企業では
稼ぎ頭だった
ローソンを
三菱商事に売却しても
まだまだ借金だらけ(泣)
創業者の中内功が2001年
全ての役職から退任し
帝国は崩壊した。
その3年後に
産業再生機構に編入されるカタチで
ダイエーは終焉をむかえる。
その後イオングループの
子会社として
屋号を残したまま
いくつかの店舗は
存続している。
セイコー生向けに
ざっくりと説明すると
こんな感じか?
イトーヨーカドーは
この熾烈な競争の勝利者、だった
ハズだった。
が、ここに来て
イトーヨーカドーは
いま、岐路に立たされている。
その前に
セイコー生むけに
質問、アナタたち
なぜ
イトーヨーカドーが
青森県から撤退し
北海道から撤退し
東北全体から撤退し
はては
関東にある店舗を閉店したのか、
わかりますか?
赤字、不採算店を
閉店するのならば
わかるけど
昨年、閉店となった
店舗はそのほとんどが黒字経営
なのに、閉店した
なぜなのか?
これは真剣に考えてみる
余地のある問題です。
だいぶ、考えました。
ワタシが出した結論、
それは
イトーヨーカドーは
創業者一族らが
薄利多売のスーパーやってるのが
バカらしくなったから
である。
スーパーマーケットというのは
良い品を、より安く
お客様に提供するのが
金科玉条、至上命題である。
そういうのが
一部の経営陣らには
バカらしくなったのであろう、と。
傲慢か?それは
そうだけども
これには理由がある。
定価が
一本150円の清涼飲料水を
売る、として
イトーヨーカドーそばにある
ドラッグストアが
一本118円で販売してたら
イトーヨーカドーは対抗して
1本108円で販売しないと
売れないし、顧客が
ドラッグストアへ流れる。
けど
セブンイレブンで販売してたら
客は定価の一本150円で
喜んで
買って行ってくれる。
それも毎日毎日。
↑
この現実を
イトーヨーカドーの経営陣らが
気づいてしまった時
安売り販売して
頑張るのが
急にバカらしくなって
しまったのですよ、彼らは。
弘前市
青森市
八戸市
にあった
イトーヨーカドーは
どれも黒字経営でした。
フツーに店開けば
お客さんが来る店舗でした。
けど
同じ商品を
親会社の
イトーヨーカドー
と
子会社の
セブンイレブン
とで売るのでは
定価販売で売れる
セブンイレブンの
方が圧倒的に
利幅がデカいし
人件費に関しても
イトーヨーカドーで
正社員として雇うより
使い捨てのバイト雇った方が
圧倒的に安くつく、
ラクしてボロもうけ出来るわけです。
じゃあ、そうしようぜ!
って創業者一族とか
経営陣がやらかした結果が
これ、です。
ワタシなんかは
「これじゃ単なる焼畑農業じゃねーか!」
って思うわけですが。
イトーヨーカドー側の
こういった姿勢は
イトーヨーカドー出身で
セブンイレブンを
10兆円企業に
育て上げあげた
鈴木敏文さんを
追い剥ぎ同然で
退任させ
追い出したあたりから
露骨にわかってましたけど。
創業者の伊藤家一族や
現・経営陣らは
イトーヨーカドーを
「不採算部門」と
言い放ちました。
閉店に追い込まれた
店舗のほとんどは
黒字経営だったのに、です。
吐き気をもよおすほどの
傲慢さですね。
伊藤家は
イトーヨーカドーの
スーパーマーケット部門を
他会社へ切り売りして
捨てようとしてるのが
いま、です。
これだけ聞くと
セイコー生にとっては
単なる胸糞悪いだけのハナシですが
コトはそう簡単ではありません。
「そうは問屋がおろさないよ!」
ってなワケでして(汗)
東京、関東や
大阪、関西の
JR主要駅にあった
キオスクが
次々とセブンイレブン
へと変貌して
創業者一族なんかは
笑いが止まらないんでしょうけど、
それに待ったをかけたのが
カナダの外資系企業
クシュタールです。
セブンイレブンの買収をもちかけました。
セブンイレブンは
もともとアメリカの会社です。
会社が破産して
1991年に
イトーヨーカドーが買い取るカタチで
今のようになりました。
セブン&アイホールディングスは
営業利益の50%が
北米市場です。
カナダ企業の
クシュタールには
十分ウマミがある。
クシュタール側が
セブン&アイホールディングスへ提示した
額は7兆円。
創業者一族、現・経営陣は
これを一蹴します。
さて、ここから少し専門的な知識
のハナシとなります、
セイコー生の皆さん
頑張ってついてきて
ください。
面白い話ですから(笑)
株式会社って
銀行から借金する代わりに
株券を発行するから
「株式」会社になるわけです。
今日の
セブン&アイホールディングスの
株価は2387円です。
ついこの間まで
1500円ぐらいだったから
バク上がりですね。
株式市場に「上場されている」会社
つまり株券の売り買いが行われて
いる会社の場合
ひと株1500円の会社の株を
一万株買ったら
1500万円かかります。
実際には税金とか
証券会社に支払う手数料が
あるから
もっとかかるけど。
このとき会社側は
会社を運営していく資金として
1500万円をゲットし
株主は
1500万円相当の資産価値のある
「株券」をゲットした
ことになります。
が、株価というのは
毎日毎日、変動します。
一番わかりやすい例としては
株価が1500円のときに
セブン&アイホールディングスの
株券を1500万円ぶん
買ってた株主は
株価が2387円の今日
持ってる株を全部売り払ったら
2387万円になりますから
800万円以上の利益を
得ることになります。
また、会社が倒産、破産した場合
株主がもってた株券は
タダの紙くずになります。
これが株取引の基本情報ですね。
セイコー生へ
さらにギアを上げていきますよ(笑)
株式会社にとって
株券は運営資金調達のための
打ち出の小槌ではありません、
当然、それなりの
リスクもあります。
株券を発行し
上場する、ということは
その会社は
「株主のもの」ということに
なります。
ということは
発行ずみ株券の
過半数を
特定の一個人とか一企業に
握られた場合
その瞬間から
その会社は
その一個人あるいは一企業に
乗っ取られる、ということです。
実際には出来ないけど
(理由は後述する)
もしも
セブンイレブンが
ローソンの株の過半数を取得した場合
ただち
ローソンの社長ほか経営陣は
クビになり
いまあるローソンの店舗は
全て
セブンイレブンになるか
閉店になるか
の二択です。
かなり過酷なハナシでしょ?
だから株式会社は
いきなり会社を乗っ取られないよう
防衛策を講じておく必要があります。
仮に一万株を発行していたとして
5001株を個人に握られたら
それで乗っ取り完了ですから。
その人の好きなタイミングで
株主総会開けれるし
過半数握ってるいるので
社長を筆頭に
会社の人事権も
全て掌握されます。
大株主から嫌われてたら
問答無用で即クビです。
それに不服だと裁判おこしても
必ず負けます。
そういう仕組みだからです。
コンビニ業界最大手でありながら
セブンイレブンは
ここが甘かった。
クシュタールが
セブンイレブン買収を
提案し
創業家、伊藤一族や
現経営陣は
それを一蹴した、
ここまでは既に書きました。
で、相手が
「はい、わかりました」
と引き下がるのか?
となると
そうもいきません。
商法上、合法的な「企業乗っ取り」
の方法があるからです。
tob
take over bid
敵対的買収、です。
これは現在の株価とは
別に
「この会社の株券を」
「ワタシたちは」
「この期間まで」
「この値段で買います」
「株主のみなさんワタシらに売って!」
というのを
公的文書で役所に提出して行う
「合法的な企業乗っ取り」です。
今日のセブンイレブンの株価が
2300円ちょいなので
クシュタールが
tob 仕掛けるならば
これより最低1000円は上乗せした額で
公開買い付けを行うでしょうね。
飛びついて売る人らも
少なくないでしょう。
tob に対する防衛策として
有効なのが
mbo
management buy out
です。
これは
自分の会社の株を
その会社が買い付ける
というやり方です。
tboと同じで
現在の株価より
高い価格で
買い付けないといけないので
膨大な資金が要ります。
ただしmboで過半数の株を
ゲット完了した時点で
もう、どこの会社も個人も
乗っ取りは不可能となります。
セブンイレブンが
ローソンを
乗っ取りできないのは
このせいです。
ローソン、
ファミリマートは
すでにmboを実施ずみで
株式非上場だからです。
セブンイレブンは
後手後手で
していなかった、
そこを突かれた。
まんま経済小説「ハゲタカ」
の世界そのものですね(笑)
セブン&アイホールディングスが
これからmbo を行うとして
それにかかる資金は
9兆円です。
ここまで巨額の資金を
メインバンクの
みずほ銀行とかは
「はい、そうですか」と
あっさり貸しますかね?
必ず二の足を踏んでるハズです。
クシュタールが
セブンイレブンの
買収で提示した金額は
7兆円、
クシュタールが
tboを仕掛けてくるなら
それ以上の額でやるでしょうね。
仮に
セブンイレブンが
9兆円の資金調達に成功したとしても
クシュタールがそれを
上回る額でtob を
実施したら
セブンイレブンは即死です。
創業者一族、現・経営陣は
即クビです。
そうなった時
伊藤家はどうしますかね?
またイトーヨーカドーやりますか?
あの閉店で
少なくとも
青森県の顧客らなんかは
「自分たちは棄てられた」
と感じてるハズです。
それで
イトーヨーカドーが
「また、やるんでヨロシク」
って言われて
誰が喜びますかね?
バカにされてるって
感じるんじゃないですかね?
青森高校のみなさんは
それを見て
「ざまーみろ」って
笑いますか?
それとも
イトーヨーカドーの連中が
破滅していくのを見て
悲しみますか?
セイコー生のみなさんに
ワタシが伝えたかったことは
そこです。
セイコー生のみなさん
アナタたちは
いま、日本という国が
どうなっていくのか、
それを今まさに目撃している状態です。
それを忘れないで下さい。
仮に、たとえ
セブンイレブンが
mboに成功して
乗っ取りを阻止できたとしても
9兆円という額です
借金の利子だけで
年に数千億円かかります。
いくらセブンイレブンが
10兆円企業だとしても
これを支払うのは無理でしょうね。
ダイエーのときは
2兆円の負債で
つぶれましたから。
歴史は繰り返す、とは
申しますが
また、繰り返されました。
いま自分は偉大なる
歴史の瞬間に
立ち会っているのだな、
と痛感しました。
オーサカより
記す。