タイムトラベルファミリーレストラン

しばらく忙しくしていたが、無事に(無事かどうかは怪しいところだが)大きな物事も終え、久しぶりに頭を空っぽにして日々を過ごせている。

このような時間ほど、後になってもっと有意義に使えば良かったと後悔するのだが、相も変わらずお気に入りのファミレスに行って本を読みながら人間観察を楽しんでいる。
こんなどうしようもない時間が私にとっては大切なのである。

突然だが、私はなぜか活き活きとした若者を見ると敵対意識を持つ。
私が華やかな生活を送っていない分、きっと妬ましく思ってしまうのだろう。どうしようもない性格だな自分。

ある日、私の敵対意識を抱く対象となり得る三人組の男子学生がいた。
「シャーッ!」と言わんばかりにガンを飛ばしてしまう、ダメな私。

彼らを観察する。
横柄な態度で席に着くたび、ルーズリーフと「るるぶ」を取り出す。
ん?るるぶ?

インターネットが発達し、検索ツールも多岐化し、スマホ一台あれば旅行計画から宿泊先の予約までできる令和の世の中において、時代の最先端を走る活き活き男子学生が、「るるぶ」京都を見ているのだ。

私を目を疑ったが、確かに彼らはるるぶを見ながら、ルーズリーフに京都の地図を不器用ながらもトレースし、旅行計画を立てているのだ。

私は彼らに威嚇行為を取ったことを謝ると同時に、微笑ましい気持ちになった。

現代社会において、私たちは欲しい情報だけを断片的にしか集めれれなくなってしまっていると感じる。

この時代において、1ページに「これでもか」と視覚的情報をぶち込む「るるぶ」にロックでアヴァンギャルドな精神を感じ取ったと共に、彼ら三人組には、このまま「るるぶ」を持って時代の波に抗いながら京都を旅して欲しいと願った。

ふと私が小さな時、旅行にも行きたくても連れて行ってもらえず、拗ねているときに良く親が見せてくれたのがるるぶだったことを思い出した。

確かるるぶの遊園地の特集号だったと思う。
ページをめくる毎に広がるファンタジーに心踊らせ、
没入して冒険心を満たしていた。

るるぶは私にとっての冒険の書だったのだ。

そんなことを思い出しながらオレンジジュースを飲む。
やっぱりファミリーレストランで過ごす時間は有意義である。



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