美容を趣味にしよう
わたしは洗顔料で顔を洗わない。
水かぬるま湯でパシャパシャするだけ。
わたしは化粧水、乳液をつけない。
週1か10日に1回、手持ちの馬油をつけるだけ。
そんなこんなで数年やってきた。
さらにタバコを吸うわたしは、ここ数年で、フルスピードで老けてきた。
目の横のシワ、ほうれい線、ほっぺたが垂れ下がってブルドッグのようになってきたフェイスライン。
メガネをかけることが苦痛だった。
メガネをかけて鏡を見て、現実を知ることが恐怖だった。
なぜ、そこまで問題を放置してきたか。
それは、わたしが精神疾患を持っているからだ。
メンタルがおかしくなっているときは、美容どころじゃない。
見た目をかまうどころじゃない。
たびたびうつ気味になるわたしは、たびたびシャワーすらサボる。
髪を洗うなんて、ひと仕事だ。
だから、髪型もずっとボサボサのショートヘアにしている。
(ツヤのあるきれいなショートヘアにしようとすら思わない)
きっかけは、ある日の訪問看護。
わたしはなにを思ったか、その日化粧水と乳液をつけていた。
(持ってはいたけど放置してたやつ)
訪問看護のお兄さんは言った。
「あれ?とりこさん、今日メイクしてますか?」
わたしは答えた。
「してません。
でも、今日、化粧水と乳液をつけてみたんです」
訪問看護のお兄さんは、いつもより肌のトーンが上がっている、メイクしたのかと思った、と言った。
それからちょこちょこ、わたしはお肌のお手入れをするようになった。
訪問看護のお兄さんは、ときどき気づいてお肌の調子を褒めてくれた。
ここのところ、メガネをかけるようにしている。
メガネをかけて、じっくり自分の顔を見るようにしている。
メガネをかけていないとき、鏡を見ても気づかずにいられるシミ、シワ、フェイスラインをじっくり見る。
そして、ちょこちょこ化粧水、乳液をつけ、たまに蒸しタオルパック、オイルパックなどしてみる。
時間はたくさんある。
作業所には午前中しか通所してないし、暇な時間にずっとずっとスマホの画面を見ているようでは脳が疲れる。
その時間お肌のお手入れをしているほうが、ずっといい。
メンタルケア。
それは、精神疾患を持つわたしが、最優先に考えなければならないことだ。
それには、趣味をいくつも持つのが良い、と言われている。
美容を趣味のひとつにしてみよう。
使うコスメは、プチプラお手頃価格でいい。
ていねいにお肌のお手入れをする、そんなゆったりした時間を持つことが、きっとメンタルにもいい。
きれいな人になりたい。
50代になってもそう思う。
年相応の、魅力的な女性になりたい。
失った若さに執着するのではなく。
今度の休日には、ドラッグストアに行ってみよう。
良さげな洗顔石鹸でも見てみよう。
夢はふくらむ。