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研究科の廃止と整理解雇の有効性
西南学院事件(福岡地判令和6年1月19日令和4年(ワ)第3752号)
(事案の内容)
学校法人西南学院(以下「法人Y」という。)が設置する法科大学院の廃止に伴い、実務家教員として無期労働契約を締結していた弁護士X(以下「X」という。)に対する、法人Yの解雇が整理解雇法理に基づき有効と判断された事案。
(経緯)
①Xは、平成16年4月1日以降、複数回、法人Yとの間で有期労働契約を締結ないし、更新し、法科大学院の実務家教員として就労していた。
Xは、有期労働契約の契約期間の末日である令和4年3月31日までに法人Yとの有期労働契約の通算契約期間が10年を超えることを理由に無期労働契約への転換を申し込んだ。
②法人Yは、Xに対し、法科大学院の廃止に伴い教員定数が0人になったこと、法学部のカリキュラム編成上Xに担当科目の配当ができないことから、就業規則18条3号(教員定数の縮小に伴い、教員の整理を要するとき)及び同条4号(その他前各号に準ずるやむを得ない事由のあるとき)に基づき、同年11月11日付で解雇(以下「本件解雇」という。)することを予告した。
その後同月30日に、法人YはXに対し、本件解雇を行う旨の意思表示をした。
【裁判所の判断】
1 判断枠組み
本件解雇は、法人Yが設置運営していた法科大学院の廃止という法人Yの経営上の理由に基づくものであり、Xに特段の帰責事由はない。したがって、…いわゆる整理解雇法理に沿い、〔1〕人員削減の必要性、〔2〕解雇対象となる人選の妥当性、〔3〕解雇回避努力ないし解雇に伴う不利益軽減措置の履践及び〔4〕手続の相当性等の事情を総合考慮して判断すべき。
2 〔1〕人員削減の必要性及び〔2〕解雇対象となる人選の妥当性について
法人Yは、平成30年6月には法科大学院の学生募集を停止する旨の発表を行い、令和4年3月末には法科大学院を廃止し、本件解雇がされた同年11月末には法科大学院に配置し得る教員の定員は存在しなかった。
また、Xは、弁護士業務との兼任も認められ、他の職種との兼業が基本的に認められていない研究者教員とは立場が異なり、Xが法科大学院の実務家教員以外の職種に配置転換されることは想定されていなかった。
そして、X以外の実務家教員は全て無期転換権を行使することなく期間満了に伴い法人Yとの雇用契約を終了したことも併せ考慮すると、法科大学院の廃止に伴い配置されていた実務家教員の雇用を全て終了させた法人Yの判断は相応の合理性を有しており、当該判断に基づく実務家教員の人員削減の必要性及びその対象としてXを選定したことの妥当性は認められる。