ご縁
去年の秋、私はある商業施設の雑貨屋に入った。必要なものがあるわけではないが「これがあったら素敵だなぁ~」と考えるだけで楽しい。店内をウロウロしているとハンカチが沢山置かれていた。
家には貰ったり買ったハンカチがそれなりにあるので忘れた時以外に購入する必要はない。だが、私の好きな北欧風の柄が目の前に置かれていたら素通りは出来ない。
気付けば「どれを買おうか…」と真剣に悩みに悩み、私のハンカチで娘が手をふく機会も多いため、娘が好きな孔雀柄のハンカチを購入していた。娘は案の定「私も欲しい!」と言う。す「一緒に使おうね」と答えて、私達のハンカチになった。
先日、近所の本屋で好きな写真家のサイン本が販売される事を知った。本屋が移転してから初めて行くので営業時間等を調べていたら、お店が前より広くなり、絵等の展示·販売も行っている事がわかった。
行く日は絵·布製品·器が販売されている。春休み中に出不精の娘を連れて行くには何か興味をひかなくてはならない。「娘ちゃん、素敵なハンカチが売っていそうな本屋さんに行こう」と言って誘い出して出掛けた。
店内に入ると一人の女性が立っていた。「こんにちは」と挨拶をして、作品を見始めた。予想通りハンカチが売っていた。「娘ちゃん、たくさんハンカチがあるよ!」と声をかけ、改めてハンカチを見ると孔雀柄のハンカチがある。「私、これ持ってます」と言って自分の鞄からハンカチを取り出した。
「どちらでお買い求め頂きましたか?」聞かれたので「○○で」と答える。「あぁ、○○ですね!ありがとうございます!」なんと、孔雀柄のハンカチの作者がそこに居たのだ!作品について色々伺い、楽しい時間を過ごせた。そして私達のハンカチは増えることになった。
レジでハンカチを買い、お目当て本の予約をした。ふと壁を見ると私の好きな絵本作家の絵によく似た色紙が飾ってある。店主に「この色紙、もしかして△△先生の色紙じゃありませんか?」と尋ねた。「そうなんです。僕、前職で△△先生の担当編集者だったんです」との事!
△△先生は図書館に行くと娘が必ず「読んで」と持ってくる赤ちゃん向けの絵本作家。娘があまりに好きなので、2才の誕生日に近県で講演会がある事を知り「●●ちゃん(キャラクター)のお父さんに会いにいこう!」と参加した。
講演会の係の方に「もし可能でしたら先生のサインを頂きたい」とお願いすると幸運なことに先生に会わせてもらえた。
先生との雑談で講演会に来た経緯を話すと、サインだけでなく、キャラクターがお誕生日の花束を持った絵まで描いてくださった。
先生は絵本の通り、あたたかくて優しい方で私は益々好きになった。
お礼も兼ねてファンレターを出したら、手書きで「娘ちゃんはお元気ですか?」とメッセージ付きのお返事を頂き、今でも大切にしまってある。
そして、出版社で行われた「●●の指人形プレゼント」に応募した事もあった(残念ながらハズレた)。指人形は店主の発案の企画だったそうだ。
「好きなモノを作った人」が繋がりすぎて、一日にこんなに驚いた事があったか?と思うくらい驚いた。
就職氷河期世代の私は「ご縁=体の良い断り文句」のイメージがあり、あまり好きではなく使いたくない言葉だ。しかし、今日はご縁を感じ、出会いに感謝せずにはいられなかった。
自分の中のご縁のイメージが前より良くなった日だった。
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