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上手な並の先生は一回の活動の中で繰り返しやる時間を確保する
学校の授業や学びの場では、どうしても時間に追われがちです。特に、限られた時間内で単元を進めなければならない場合、あるトピックを「一回だけ」で済ませてしまうことが多いのではないでしょうか。しかし、「一回で済ませる授業」は本当に学びが定着していると言えるのでしょうか?また、仮に一斉授業ではなく、個別最適化された自由進度の学習であっても、一度だけの学びではそれを自分の知識として活用するまでには至らないことが多いのではないでしょうか。
経験や観察を通じて気づくのは、上手な先生ほど「繰り返し学ぶ場面」を意識的に設けているという点です。本記事では、「一回で終わらない学び」の素晴らしさと、それを具体的にどのように授業で活用できるのかを考えます。
繰り返し学ぶ意義
学習は、「覚える」だけではなく「使えるようになる」ことで初めて本当に身についたと言えます。一回でできるようになったとしても、それはその場限りのスキルや知識に留まり、しばらく経つと忘れられてしまうことがほとんどです。心理学的にも、学んだ内容を定着させるためには、一定の間隔を置いた復習や繰り返しの練習が不可欠であることが知られています。この「繰り返し」が学習の質を高めるだけでなく、長期的な記憶や深い理解にもつながるのです。
一斉授業でも自由進度の学習でも、教師が「一回で終わらせない工夫」を取り入れることで、生徒の学びをより確実にし、成長を促す環境を作ることができます。以下、具体的な教科別の例を挙げてみましょう。
1. 国語:複数の視点を持たせる学び
国語の授業で単元の文章を紹介する際、先生が取り上げる部分を一つに限定せず、いくつかの候補を提示してみる方法があります。たとえば、物語文であれば「冒頭の一節」「クライマックス」「結末」のいずれかを選ばせ、それぞれについて議論させる場を設けるのです。
これにより、生徒たちは「どの部分が自分たちの発表に適しているのか?」を考え、複数の選択肢を比較検討する経験を積むことができます。また、選ばなかった部分についても理由を考える機会が生まれ、結果的に文章全体を深く読む力が養われます。
さらに、繰り返し文章を読むことで、最初の読解では気づかなかった細かな描写やテーマに気付けるようになります。このように、複数の視点を持つ繰り返しの学びは、読解力や発想力を鍛えるうえで非常に有効です。
2. 算数:練習の幅を広げる
算数の授業では、教科書に載っている練習問題をそのまま解くだけでなく、さらに追加の問題を用意することで、生徒たちが繰り返し練習できる機会を作ることができます。たとえば、四則計算の基礎練習であれば、教科書の問題を一度解いた後、難易度の異なる問題を用意するのです。
ここでポイントとなるのは、生徒それぞれのペースに合わせた取り組みを可能にすることです。早く終わった生徒には少し挑戦的な問題を与え、基礎がまだ定着していない生徒には同じ種類の問題を繰り返し練習させることで、一人ひとりのニーズに応じた学びが実現します。このような仕組みを導入することで、教室全体の学習効果が高まるだけでなく、個々の学びの進度が可視化され、教師や生徒同士の相互理解が深まります。
繰り返しの場がもたらすもの
繰り返し学ぶことは、単に知識を定着させるだけではありません。それ以上に、考える機会や自分の理解を見直す機会を与えてくれます。例えば、繰り返し課題に取り組む中で、生徒たちは「どの部分が分からないのか」「どのスキルをもっと練習すべきか」を自分自身で把握する力を身につけていきます。
また、繰り返しを意識的に取り入れることで、生徒の達成感や自己効力感も向上します。最初は難しかったことが繰り返すうちにできるようになる過程を経験することで、生徒たちは「やればできる」という前向きな気持ちを持つようになります。
1回で終わらない学びには、深い理解、記憶の定着、生徒の自信向上といった数多くのメリットがあります。それを授業に組み込むためには、教師が「繰り返す仕組み」を意識的に設計することが重要です。国語や算数をはじめとする教科では、複数の視点や練習の幅を取り入れることで、生徒たちの思考を広げ、より質の高い学びを提供することができます。
繰り返しは単なる「同じことの繰り返し」ではなく、新しい発見や成長の機会を生徒たちにもたらします。一回で終わらない授業を目指して、教育の可能性をさらに広げていきましょう!