80爺さんのジジ放談、国産ロケット開発は何おため?誰のため?
ロケットの発射にはなぜか夢があります。
宇宙への旅立ち、はやぶさの帰還、鉄腕アトム、銀河鉄道999、宇宙戦艦ヤマト・・・ロケットファンも少なくありません。打ち上げの日取りは直前に公開されることが多く、関係者ででもない限り特別なニュースソースがなければ種子島で見学するのは難しいのが普通です。それでも、マスコミ関係やいろいろな関係者が種子島にホテルをキープし、航空券を手配するからその動きを察知して発射の日取りに見当をつけ、種子島へ渡る人がいます。ファンを超えたマニアです。決して少なくありません。
見学のヴィウ・ポイントがあって、地元の人は朝早くからそこに陣取るようです。何年か前に種子島の友人を訪ねた時にその場所を案内してもらいました。種子島に着いて、最初に連れて行ってくれたのは鉄砲博物館でした。そのあと回ってくれたのは犬城海岸、最後に案内されたのが「種子島宇宙センター」でした。ヴィウポイントに案内されたのは2日目でした。
「発射の日になるとこの小高い山は人で身動き取れなくなるんだ」と彼は説明してくれました。それほどにロケットファンは多いのですね。
ところで、前回の「ジジ放談」で打ち上げは打ち止めにしてはどうか?と問題提起しましたが、賛同者は多かったのか少なかったのか、友人たちの意見では打ち上げ推進派が多い感じでした。
「失敗から多くを学ぶ」と言う法則がありますし、「失敗を恐れては何もできない」と言うのもあります。「失敗は成功の母」と言う古いことわざもありますし、最近は「失敗学」という学問分野まであるそうです。失敗をどう考えるかは大切だと思いますし、「失敗を恐れない」ことは同感ですが、失敗を恐れずに挑戦する「目的」は何なのかが問われると思います。
宇宙への夢の実現・・・のために種子島でロケットを射っているわけではありません。ロケットビジネスで稼ぐために、あるいは一般に広報されているように「災害探知と情報提供、気象情報収集、GPS機能取得、車の自動運転のための地上情報収集など」の情報を収集する衛星を打ち上げるため・・・と言う表向きの考え方もあります。車の運転で、地図がなくても行き先を案内してくれる「カーナビ」を使っている人は多いし、知らない街でスマホに行き先を案内してくれる「ナビシステム」は私自身もたびたび利用しているありがたいシステムの一つです。
しかし、国産ロケットでなければこれらの情報収集ができないわけではなく、私は仕事でタイに長く常駐していましたが、タイは国産ロケットを1機も持たない国ですが、車の運転にはナビは使っていました。つまり、やがて車の自動運転(ドライバー不要)の時代が来るでしょうが、国産ロケットがなければ自動運転にならないということではありません。開発した「衛星」を国外のロケットで打ち上げてもらうことも可能ですし、衛星そのものの情報をもらうことも可能です。気象情報や災害情報などは日本の独自衛星だけでは情報が十分でないために外国の情報を使って総合的な判断をしているのは知られていますし、交際間の情報のやりとりはますます重要になっていくと思われます。
国産ロケットの最も重要な目的は「宇宙ビジネス(全方位システムなどを含む衛星打ち上げ)に参入する」と言うことにあると思います。中心的な目的は「ビジネス」ですね。公に広報されてはいませんが、今般のウクライナ戦争をみていると、衛星の軍事利用は戦争の行方を決めるかなり重要な要素であることが見て取れます。そこをしっかり押さえておくことが大事かと思います。
となると、誰のビジネスか・・を考えなければなりません。夢とか鉄腕アトムとか銀河鉄道などとは関係がないのですから。宇宙開発、国産ロケットビジネスを一手に担っているのは三菱重工業です。今までに莫大な国家資金が流れています。
(開発費用だけで1900億円が投じられえいますが、何度も延期されていますの
で予定よりも費用が増えている可能性もあります)
ロケットが成功すれば「ビジネスチャンス」を受けるのは三菱重工業と言うことになります。その上でH3の打ち上げ失敗のことを見ていかなければなりません。国民の夢を乗せたロケット、ではないという現実を直視した上で、失敗の原因に迫る必要があります。と言うのは「失敗もビジネスの内」と言う考え方もないわけではありませんからね、その辺りをニュースで拾ってみたいと思います。
このことの重要なニュースソースがあります。
2021年1月9日に放映された中京テレビの特別番組「魔物 H3開発の裏にあった真実とは」です。ロケットに関心のある方は一度視聴されることをお勧めします。この番組を見ると、打ち上げ失敗の始まりは2021年の時点で兆候があったのかな、と思えてしまいます。このビデオについて次回「ジジ放談」で取り上げたいと思います。
〈表紙の写真はロケット発射の最良ヴィウポイントから〉