『ゴング格闘技』2025年1月号(No.335)感想
感想とかについて書く。
UFC世界フライ級王者アレッシャンドリ・パントージャに挑戦
朝倉海「全てはこのときのために」
唯一無二の格闘家
日本時間12月8日に行われるUFC310においてメインイベントとしてフライ級タイトル戦に挑む朝倉海。
ゴングを読んでいて、以下のmmaplanetの記事を思い出した。
曰く、朝倉海は日本で唯一の格闘家だと。
確かにその通りで、海は今までのどの日本人ファイターとも違う道を辿ってきている。それは決して彼が不良を売りにしていたアウトサイダー出身だということではない。
彼が違うのはyoutubeを利用して圧倒的な人気を集め、そこで得たリソースを惜しみなく自身へ投資し、最適な環境を築いてきたことにある。
以下は記事の要約になる。
海は2022年に初めてUFC PI (UFCの研究所兼トレーニング施設)へ行き、日本との環境の差を自覚。
日本において新たなジムを設立し、そこへアメリカで出会ったビリー・ビゲロウ、エリー・ケーリッシュをスカウトし招へい。
UFCとの交渉の際は自身のyoutubeチャンネルやRIZINでの集客力の数字をアピール。
岡見勇信、堀口恭司、平良達郎とは全く異なるやり方でタイトル戦にこぎつけた。
現在ではスパーリングパートナーとして様々な人物を呼んでいるが、コーディ・ガーブラントのスパーリングパートナー(アラン・ベゴッソ、前LFAバンタム級チャンピオン)までも呼んでいるらしい。
海は明治時代の日本のようなことをしているわけだ。
柔術コーチ
柔術コーチとしてはノーギワールド3位の石黒翔也を呼んでいるが、これに関しては初めに聞いたときには、ADCCルールに適応している岩本健汰や米倉大貴の方がいいのではないかと思った。
しかしパントージャは以下のような動きをすることを知り(さすがに多用すしていないと思う)、パントージャに体形も近いしそれもありなのだろうか。IGLOO勢に実際に交渉したかどうかは知らない。
追記:試合後の朝倉海、パントージャ、デメトリアス・ジョンソンの発言をまとめたもの
独占インタビューUFCフライ級王者
アレッシャンドリ・パントージャ「朝倉はUFCフライ級の誰よりも危険な相手。だからこそconquer(征服)したい」
パントージャのメインコーチはカーウソン・グレイシーの黒帯であるマルコス・パフンピーニャ。
子どもの頃の柔術はヒクソンに勝利しかけたセルジオ・ペーニャの師であるオズワルド・アウベスに教わった。
BjjHeroesの記事によると、この2人はクローズドガードを発展させた人物らしく、さらにアウベスの方は天理大学に留学していて、帰国後にグレイシー柔術の立ち技とサイドコントロールの技術を進めたとある。残念ながら参考文献がないので確かめられないが、しかし興味を惹かれる話ではある。
パントージャ1人をとってもいろいろな人物とつながっているのがなんだか不思議だと感じる。
追記:パフンピーニャ(パルンピーニャ)について青木真也が試合後に語っている。
平良達郎vs.ブランドン・ロイヴァル
5分5R、至近距離の真実
ロイヴァル戦に備えたファイトキャンプにおいて平良達郎はロイヴァルのホームであるデンバーのHigh Altitude Martial Arts(HAMA)を選択。
HAMAにおいてはジムに何も支払っていないにもかかわらずなぜか平良達郎のための特別な待遇が用意され、ロイヴァル陣営の人間から徹底的にプロテクトしてもらえた。
平良達郎は天性の人たらしのようだ。
ロイヴァル戦後は再びアメリカに行く予定があり、その時にはヴェラのジムとATOSに行く予定とのこと。
達郎のグラップリングは通用したのでそれをさらに強化する目的。
追記:ATOSでなくAOJに行ったそう。AOJを選んだ理由は不明。
ATOSならアデサニヤが柔術をしていたが、AOJにUFCファイターは(いるかもしれないが)聞いたことがない。
AOJはどちらかというとグラップリングよりも道着のイメージがある。グラップリングで活躍している選手もいるが、スタイルはADCC寄りではなく、MMAに活きそうにないようなもの。UFCでRガードが使われいるのを見たことがあり、役に立つとしたらせいぜいそれくらいだろうか。
ATTに行った方がMMAに特化した柔術ができると思うがどういう考えなのか知りたい。
”立ち技MMA”でシェイドゥラエフ撃破へ
久保優太「立ち技競技者がどうMMAで勝つかを見せる」
久保優太はMMAファイターとして強くなるよりも、立ち技の技術をMMAでどう使うかに興味を持っている。
近距離のテイクダウンを得意とする高橋遼伍戦では四つを防ぐために首相撲を使ったディフェンスを強化し、中距離からのタックルを使う斎藤裕戦ではそれをいかに捌くかを練習した。
テイクダウンディフェンスとしてのクリンチ
久保によるとグレコの攻防は首相撲を使えば対応できるらしい。これは面白い話だと思う。
MMAにおける組技の要素とはレスリング(フリースタイルとグレコと壁レス)とブラジリアン柔術がほとんどだが、一部の人間は柔道(サンボ)、キックボクシング(ムエタイ)の攻防も身に着けている。
昔はキック出身の人間がキックの組みの技術を使って相手の組みに対抗するのはあったものの、さすがに現代においては私の知る限りでは記憶にない。もちろんテイクダウン目的では現代でも見るが。Dynamic Strikingでもただのクリンチの教則はあってもテイクダウンディフェンスとしてのクリンチはないはず。
(追記:調べてみたらフィジエフが教えている動画があった。
ガムロット戦の際はタイガームエタイでなく、キルクリフでテイクダウンディフェンスに取り組んだとあるので、おそらくテイクダウンディフェンスとしてのクリンチがまだ必須教養となるほど体系化されておらず、一部の人間だけが学んでいる状況だろうか。)
MMAグラップリングとグラップリング
久保の言うことが本当だとすれば、MMAグラップリングにはまだ発展の余地があるということになる。
それ以外にもまだ研究する余地はあると思う。ノーギ柔道、サンボ、カレッジレスリング、キャッチレスリングなど。
現状、MMAに輸入される組技はノーギが主要な経路なので、ノーギにおいて他の格闘技の研究が進めばそれらはやがてMMAにも入ってくるだろう。
例えばサンボの足関節はエディ・カミングスを通じてノーギに輸入された。
また、足関節の標準装備となっているアオキロックはサンボとの交流で生まれた。
現在のグラップリングよりももっと広い範囲を考えたものとして以下のものがある。
吉田豪 新・書評の星座
『UFC帝国戦記 1993-2023』
『UFC帝国戦記』が今年に翻訳され、読みたいとは思っていたものの優先順位が低くまだ買っていなかった。
(格闘技関係の本としては『日本レスリングの物語』やキャッチレスリングつながりで『最強の系譜 プロレス史 百花繚乱』の方が読みたいので、UFC本を読むのはまだ先になりそう。)
そんな中、書評が載っていた。気になった部分を挙げていくと
トランプとの結びつきの強さ、初期のUFCが90年代の悪趣味文化と近いものだったこと。
ホイス長男、コンリー・グレイシー
「グレイシー柔術は、練習後も君と一緒に帰宅する─
生涯かけて続く学びの過程だ」
私は○○とは人生だのような言葉が嫌いで、そんなわけないだろといつも思う(例外はある)。
ホイス曰く「柔術とは、生き方だ」であり、コンリーはグレイシー柔術が教えることの1つには決定する能力があると言う。この能力を説明するにあたり、コンリーが引き合いに出すのはホイスが指導していた特殊部隊員の話。
その人物に別の人間がなぜ柔術をするのかと尋ねたことに対する返答が
まったくもって意味不明。決定する能力なるものが何を指しているのかわからないし、(この話が本当かどうか知らないが)するべきことは科学に基づいたことだろう。意思決定能力とは科学的には何か、それは転移するのかを科学的に検証すればいいだけのこと。
こういった何かを拡大解釈して人生と結びつけることは嫌いだが、しかしそれが広く行われていて、ライフスタイルスポーツという言葉があるのも事実であり、気になっていた以下の本を読んだ。
夏に読んだのにまだ書評を書けていないが、もっとライフスタイルスポーツ全般について書かれたものを読んだ方がよかったという感想。
ライフスタイルスポーツに関する基本的な文献は以下の人物のものだろう。