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合同式(4)

合同式の真骨頂は表記の簡略化です。

ピタゴラス数の少なくとも一つは$${3}$$の倍数であることを、合同式を使わないで証明する方法と使って証明する方法の2つを比較してみます。

問題を整理します。

$${a^2 + b^2 = c^2}$$を満たす正整数組$${(a, b, c)}$$をピタゴラス数と言います。

$${(3, 4, 5), (5, 12, 13)}$$などです。

この正整数組$${(a, b, c)}$$のうち、少なくとも一つは$${3}$$の倍数であるということが主張するところです。

まず、合同式を使わずに証明します。

背理法で証明を進めます。

「$${a^2 + b^2 = c^2}$$を満たす正整数組$${(a, b, c)}$$のうち、少なくとも一つは$${3}$$の倍数である」の否定「$${a^2 + b^2 = c^2}$$を満たす正整数組$${(a, b, c)}$$は全て$${3}$$の倍数でない」が真であると仮定します。

この仮定が正しいとするならば、$${k}$$を整数としたとき、$${a, b, c}$$はそれぞれ$${3k-1}$$または$${3k+1}$$で表されます。

考えられうる組合せは、
$${(a, b, c)=}$$
$${(3k-1, 3k-1, 3k-1),}$$
$${(3k-1, 3k-1, 3k+1),}$$
$${(3k-1, 3k+1, 3k-1),}$$
$${(3k-1, 3k+1, 3k+1),}$$
$${(3k+1, 3k-1, 3k-1),}$$
$${(3k+1, 3k-1, 3k+1),}$$
$${(3k+1, 3k+1, 3k-1),}$$
$${(3k+1, 3k+1, 3k+1),}$$

着目している関係式$${a^2 + b^2 = c^2}$$では$${a}$$と$${b}$$は入れ替え可能ですので、今回は
$${(a, b, c)=}$$
$${(3k-1, 3k-1, 3k-1),}$$
$${(3k-1, 3k-1, 3k+1),}$$
$${(3k-1, 3k+1, 3k-1),}$$
$${(3k-1, 3k+1, 3k+1),}$$
$${(3k+1, 3k+1, 3k-1),}$$
$${(3k+1, 3k+1, 3k+1),}$$
のパターンを検討すれば十分です。

各パターンの計算結果が下記画像です。

赤色の列は定数項が$${2}$$で、緑色の列は定数項が$${1}$$です。

つまりどのパターンでも$${a^2 + b^2}$$は$${3}$$で割ると$${2}$$余る、$${c^2}$$は$${3}$$で割ると$${1}$$余るということが言えます。

したがって、$${a^2 + b^2}$$と$${c^2}$$が$${=}$$で結ばれているのは矛盾です。

仮定が誤りであったということで、「$${a^2 + b^2 = c^2}$$を満たす正整数組$${(a, b, c)}$$のうち、少なくとも一つは$${3}$$の倍数である」が証明されました。

次は、合同式を用いた証明です。

まず、一般の$${3}$$の倍数でない正整数$${n}$$の平方$${n^2}$$について考察します。

$${n}$$が$${3}$$の倍数でないとき、$${n \equiv \pm 1 \mod 3}$$ですので、
$${n^2 \equiv (\pm 1)^2 \equiv 1 \mod 3}$$です。

「$${a^2 + b^2 = c^2}$$を満たす正整数組$${(a, b, c)}$$は全て$${3}$$の倍数でない」と仮定します。

この仮定が正しいならば、$${n^2 \equiv 1 \mod 3}$$を踏まえると$${2 \equiv 1 \mod3}$$が導かれるため矛盾です。

仮定が誤りであったということで、「$${a^2 + b^2 = c^2}$$を満たす正整数組$${(a, b, c)}$$のうち、少なくとも一つは$${3}$$の倍数である」が証明されました。

このように、合同式を用いると整数の余りに関する話を簡潔に表現できます。

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