双子じゃないのに同級生を産んだ話3

ベビーカーが動いている間はご機嫌な長女だったので、散歩はよくさせられた。

あと、赤ちゃんは子供を見るのが大好きだ。シンパシーを感じるのだろうか?

その日も長女と公園まで散歩をすると小学生数人がいる。

「こんにちは」と挨拶をしたら

『オバさん!この子 何歳?』と返された。いやまずは こんにちはだろ?
ってか、

『オバさん』のキラーワードに脳内停止した。
人生で初めてそう呼ばれた瞬間、無性に全否定したい自尊心で頭が真っ白になったのだw

かろうじて正気を取り戻し、
「この子はまだ1歳になってないよ〜」
と答えるのが精一杯だった。

呼び方がお嬢ちゃんからお姉さんになったとて、何も感じることはなかったのだがしかし、
オバさんと呼ばれた日は
女として終わりを告げられた感じがした。
まぁ、この時代のキーワード [オバタリアン]を検索してもらうと、その時のオイラの絶望感を理解してもらえるだろう(たぶん)

1990年代の小田急沿線は準主要ターミナル駅ですらホームエレベーターもホームエスカレーターも存在しない。

谷底に線路が走っているので、ホームから改札口まで つねに階段の苦行だ。

家に帰るまで、どんだけ階段責めにあうねん。

その日も駅のホームから改札口へ向かう階段の下で、
『長女を乗せたベビーカーを持って上がるぜ!!』
と気合を入れて上を睨んでいた。

いつも人の流れの邪魔にならないように、最後までホームに残ってから階段を上がるようにしていたので、よもやのことだった。

突如、後ろから 我が子を乗せたベビーカーをがっしりと掴み、高き階段をダダダダダとかけ上がってゆく若人が出現したのだ!!

あまりの速さと、オイラの他には誰もいないと思い込んでいたため、驚きで声も出ず。

とにかく長女を追いかけようにも、次女がお腹にいるためそんなに早くは動けない。
どうしよう、誘拐とか愉快犯だったら無理無理無理っっ

動揺でさらにもたつく身体を必死で動かし階段を上がる。
困惑と恐怖と動悸がMAXだ。

視線の先に、長女の姿をとらえたオイラの顔を確認した若人は、
オイラが階段の頂点に立つか立たないかくらいでベビーカーから手を離し、さささっと改札出口へ消えて行った。

足の付け根がなんだか変な方向に曲がっているような痛みがあったけども
ベビーカーの娘がニコニコと笑っているのを見て、力が一気に抜ける。

長女は、階段を駆け上がっていく風を感じて楽しかったのだろう。
オイラはそんな爽快感を味合わせてあげることはできない。

長女の頭を撫でながら
「楽しくて良かったねぇ」と言ったが顔は笑えていなかった。

長女を運んでくれたシャイな若人殿、その節はお世話になりました。
階段の下で途方に暮れているように見えていたのですね。ベビーカーを運んであげようかどうしようか、悩んでいたのでは?

ありがたかったですが、寿命が縮みました……次は一声かけてください…

あの日から27年、彼は元気にしているでしょうか。

都内も小田急もすっかり変わったなぁ…

以下4に続く

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