茅佐

とある町の学芸員。歴史と文化を調べています。調べたことをまとめる事と物語を作るのが好き。

茅佐

とある町の学芸員。歴史と文化を調べています。調べたことをまとめる事と物語を作るのが好き。

最近の記事

猫は泡沫の夢を喰う【読切部門 本文】

時は江戸時代、長崎。 稽古通詞見習(江戸時代の通訳)の稲田市太郎は、将来を期待されている18歳の青年である。 彼は、阿蘭陀商館に滞在している商館医のフランツの私塾で、西洋の医学を中心に様々な知識を得ていた。 フランツはユーモアと知性に溢れた態度で門人(生徒)に接し、若者たちはその姿に刺激を受けていた。30代前半という若さで日本のどの知識人にも勝る知識と最先端の学問の話をするフランツに、多くの若者たちは魅了された。 教鞭をとるフランツ。多くの生徒が話を聞いている。 市太郎は特

    • 猫は泡沫の夢を喰う【読切部門 あらすじ】

       江戸時代の長崎。稽古通詞見習の稲田市太郎は、将来を期待されている18歳の少年である。彼は、数年前から出島阿蘭陀商館に滞在している商館医のフランツに西洋の最新の学問学び、心から彼を尊敬していた。  ある夜、市太郎は化け猫の店に迷い込む。そして、彼の「海の外の世界に行きたい。」という夢を言い当てる。その後も市太郎に接触する化け猫・・・彼女はフランツについて「気をつけなさい。」と忠告する。しかし、その忠告は届かず、持ち出しが禁止されている地図をフランツに渡す手伝いをしてしまう。牢

      • そして、本は笑うー近世崎陽異説譚ー【連載部門 第三話】

        雪之丞は自室で煎餅布団に寝転がっている。 思いだすのは、冒険者の本が言った、招待客の潰しあいの話である。 冒険者の本「君の願いは、人を殺しても叶えたいものなのか?」 この言葉を何度も思いだすが答えを出せずに、冒険者の本は行李(日用品を入れる箱)に入れっぱなしになっている。 雪之丞は怪我が回復し、勤務に復帰する。 今日は、阿蘭陀商館の手伝いで事務作業をしている。 カイ「ユキ、復帰早々すまないね。」 雪之丞「通常の仕事はできないので…お手伝いできてよかったです。」 カイ「人

        • そして、本は笑うー近世崎陽異説譚ー【連載部門 第二話】

          目覚めると雪之丞は手術の真っ最中だった。 何人かの日本人の男に抑えられ、無麻酔で治療を受けている。 雪之丞「!!!!」 口には舌を噛まないように猿轡をされ、発狂しそうな痛みに声にならない絶叫をする。 コロン、と音がして取り出された銃の弾が皿に落とされる。 フランツ「皆さん注目!これが銃弾です。体内に残された弾丸は金属でできていることから、体内に取り残されると体を壊死させます。」 周囲の日本人たちが「おおお」とどよめく。 フランツ「摘出した後は縫合します。よく見ておくように。」

        猫は泡沫の夢を喰う【読切部門 本文】

        • 猫は泡沫の夢を喰う【読切部門 あらすじ】

        • そして、本は笑うー近世崎陽異説譚ー【連載部門 第三話】

        • そして、本は笑うー近世崎陽異説譚ー【連載部門 第二話】

          そして、本は笑うー近世崎陽異説譚ー【連載部門 第一話】

          多くの建物が倒壊し自分が火に包まれている。 周りには多くの死体が見える。まさに地獄絵図 雪之丞「うああああああああ!!!!」 恐怖に慄き、声を上げると目が覚めた。 急いで自分の体を確認する。 雪之丞「夢、か?」 こんな夢が続き雪之丞は寝不足状態である。 外では、オランダ船の来航を告げる空砲の音がこだましている。 江戸時代、長崎。 寛永12年、所謂鎖国政策の一環で日本人の海外渡航、および在外者の帰国が禁止され禁を破った者は死刑とされた。 そんな中、長崎は幕府公認の唯一の海外貿

          そして、本は笑うー近世崎陽異説譚ー【連載部門 第一話】

          そして、本は笑うー近世崎陽異説譚ー【連載部門 あらすじ】

          江戸時代の長崎。稽古通詞見習の名村雪之丞は、オランダ船から運ばれてきた荷物の中に不思議な本を見つける。本は、人格があるかのように文字で語り掛け、自身を全知を知る者と紹介する。そして、彼と契約し「招待客」になる事で、1つの奇跡が万物の通りを超えて叶う「会議」に参加できると言う。鎖国政策により国外に出ることができない雪之丞は、憧れを抱く西洋に行きたいと願う。  一方、「会議」が長崎で行われることで、世界中から鎖国政策下の長崎に「招待客」が集まり、国の体制を揺るがす事態に発展しかね

          そして、本は笑うー近世崎陽異説譚ー【連載部門 あらすじ】