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私の『暗夜行路』

 本当にひとりになってしまった。ほとんどただ一人の友人といっていい彼女と絶縁してまもなくこんな夢を見た。
 私は夜中暗い暗い道を一人歩いている。毎日のように通っている最寄り駅から我が家に通じる道だ。暗い。曲がり角までの300mほどの道には電灯が2つうら寂しく光っているだけだ。それは道を明るく照らすというよりもよりいっそう夜道の暗さを強調しているようだ。今何時だ?夜中の2時だ。午前2時に私はこんな道を一人歩いているのだ。だれもこんな時刻に歩いている人はいないだろうと寂寥感の中で見渡すと私のはるか前に70代半ば位に見える女性が一人歩いている。後ろを振り返ると少し離れた所を中年の女性が一人こちらの方向に歩いている。彼女は私の方に向かってくるからといって私を目指して歩いているわけではない。ただ自分の行く方向がこちらだからこっちの方に歩いて来ているだけなのだ。
 突然私はその寂寥感に打ちひしがれ道に突っ伏すと号泣しながら叫んだ。「もう嫌だ!こんなのは!」私の叫びが聞こえたのか前を歩いていた老女が振り返ると2,3歩引き返してきた。しかしそばに寄って来るのではなくそこで止まってこちらを窺っている気配だ。それはそうだな。私がどんな人間かわからないのだから。
 そこで目が覚めた。私は何をやっているんだろう。暗く寂しい道を夜中にわざわざ歩いて行かなくていいじゃないか。その道を歩くなら午前2時じゃなくて明るい陽のかがやく午後2時に歩けばいいんだから。常に明るい陽を浴びながら歩いていけばいいのだ。
 夜中に暗い道を歩く夢はそれから二度と見ていない。

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