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1/13 『剣樹抄 不動智の章』を読んだ

大江戸諜報絵巻の第2巻。これを読む前になんとドラマ化もされ、そちらもとても面白かった。しかもドラマは今巻に収録されている話もやっており、なので原作既読勢として観てたのに途中でドラマに追い抜かれるというレアな体験もした。
そんなドラマをしっかり楽しんだ上で読んだ第2巻、まず驚いたのは、原作義仙様、若いな! ドラマじゃ舘ひろしがやってたんだよ? 23歳て。えらい豪胆な改変だったんだな……と思うが、しかし意外とアリというか、ナシではないな、と思えた。舘ひろしレベルの迫力と雰囲気を原作義仙様が備えていたということなのか、あるいはドラマ義仙様が実は20代であったとしても受け容れられる舘ひろしの演技力だったのか。定かではないが、とりあえずよかった。
お話は、この物語の一番の見どころとも言える、光國の罪がとうとう了助の知るところとなる。だがてっきりそこがクライマックスであり最後の試練であるかと思っていたけど、思いのほか物語はさらに転がっていくようだ。敵の極楽組は更なる陰謀を推し進め、それに呼応するかのようにこちら側、幕府の大物たちも蠢動する。了助は江戸を飛び出し、光國の罪の清算はしばし先へと持ち越される。
いずれ来るべきものとして了助が絶望に叩き落されるシーンは覚悟していたが、やはり辛いものがある。ただ、そこで地獄の底でのたうち回るのでなく、柳生義仙という超越的キャラクターまで出してきて、了助を地獄のとば口で掬い上げているあたり、とても優しいな、と思った。ひたすら苦悩させるのでなく、すぐさま旅という身体の動かし先と、そして禅の呼吸という心の作法を求められたのは、了助にとってまたとない幸運だったろう。それほどの幸運でもなければ、地獄から脱け出し難いということでもあるかもしれない。
そして個人的には、旅路の中、ひたすら歩くことで心が静かに澄んでいくという了助の感覚に大いに共感したりした。俺も仕事がうまくやれずにむしゃくしゃしてるとき、散歩などして心を落ち着けたりすることあるよ。いいよな、あれ。ともあれ、了助の旅路が苦難に塗れた道のりでなくてよかった。道中で女の子とか救ってるし。さすらいのヒーローか。しかし、まだまだ道のりは遠そうだけど。


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