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8/20 『機龍警察 自爆条項〔完全版〕 上 下』を読んだ

警察小説というジャンルにはまだ足を踏み入れたばかりで目下勉強中って感じで、せいぜいポリティカル・フィクションとは警察モノのこと(だけ)を言うのではないということがわかったぐらいだが、そんな不肖の身から感じ取れる本シリーズの警察モノとしての特色は、「なんかすっごいギスギスしてる」というものであった。今作でもそれは遺憾なく発揮されていて、相変わらず特捜部は警察内のあちこちから嫌われている。そんな特捜部内で更に距離を置かれている突入班の三人の部付警部。もうなんやねんこのヨソヨソムード。いい大人たちが。そんなんでええ仕事できるんか。まあ結構できてるんだけど。手柄を上げたら上げたで一気に称賛ムードに包まれるも、その直後の敵の攻撃で再び怨嗟の的になるとか、手のひらねじり切れるわ。
ただ何だかんだ言って、その彼らの捜査パートは実際面白い。上巻の終盤まで捜査パートが半分、もう半分はライザの過去がみっちり描かれているので、そこからいざ機甲兵装による突入ミッションが始まるとまるで別の小説を読んでる気分というか、そうかこれSF小説だったと我に返る。
そしてそんな中でも、だからこそ際立つ、龍機兵の性能の異常さ。現代の機甲兵装技術の5年先を行くだなんて話だけど、ほんとに5年ぽっちで追いつくのかあれは。第一種・第二種の操縦方法とか見た感じ、ウォーカーマシンとアームスレイブくらいの差がないか。ウォーカーマシンは言い過ぎか。ATくらいか。そもそも機甲兵装技術が現実の世界に先行しているから、そのさらに5年先と言われてもわからんというのもあるが……現実は現実で別のものが発展してるしな……ドローンとか。でも高速道路を舞台にした機甲兵装による奇襲と防衛戦の緊迫感は圧巻で、日本のような、狭い土地にぎちっと都市が詰め込んである場所では、このサイズ感(3m前後)の兵器によるドンパチがとても映える。キリアン・クインもウッキウキでテロ立案してたんじゃないかな……。
今回の主役だったライザ。そして鈴石主任。そこまでのつもりはないだろうに、なんだかライザが鈴石主任に執拗に粘着してるみたいになっているので、変なひやひや感があった。実を言えばこのシリーズを読みだす前から「ライザと緑の関係が云々」みたいな前評判?を耳にしていて、果たしていかなるものなのかと思っていたが。なんとも言い難いな。今は肩を並べて共に戦う仲間だが、かつては(直接的ではなくても)加害者と被害者で、さらにその前には同質の悲しみを抱える者同士だった。二人はいったいどういう関係を構築し、どういう落着を見ればいいのか。今回はとりあえず、緑が昏迷の渦に溺れていたライザをどやしつけることで乗り切ったけど。
事件の裏に潜む〈敵〉とやらの強大さには、なんだか強大すぎて沖津部長が陰謀論に捕らわれてしまったかのようですらあったが、この手のジャンルの作品ではある意味仕方ないというか……難しいよな。現実に漸近した世界観でありつつ、エンタメを多分に加味したフィクション作品に「本物の陰謀」は欠かせない要素とさえ言える。深淵を覗いて、うっかり深淵と目が合ったなんて合点するのもそれはそれで問題なのだ。気をつけなきゃならんが、フィクションに耽るときは気兼ねなく飛び込んで没頭したい気持ちも捨て難い。その為にも、勉強は必要だな。

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