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10/3 『PSYCHO-PASS サイコパス 3〈C〉』を読んだ

前2巻をも上回る分厚さ、相当の歯ごたえだった。アニメを一度観ているから内容もスッと入ってくるかと思っていたが結構難航した。だがじっくりたっぷりやってくれたおかげで複雑怪奇な信仰特区編もいくらか理解できたと思う。
なかでもトーリの内情が深く描写されていたのがよかった。事件の主犯格なのに犯罪係数が異常に低かったり、でも入信前は色相真っ黒だったらしいとか、うっかり流してたがよく考えると君どういうことなんだ?と思える点などが納得できるようになっていた。その精神性はあまりに幼く、しかしそれ故に抱いた理想に嘘はなかったのではないか。無邪気な悪というか……凝っておらず、ある意味シンプル。だけど、だからこそ死ぬしかなかった……ような。舞子も、殺すことでしかあの場を切り抜けるすべを見出せなかった。必要なものが与えられず、そうでないものが与えられすぎた子ども。そんな印象を新たに抱いた。
灼は禁断の単独潜行に手を出し、脳の負担を深める一方でついに免罪体質に覚醒する……というより、むしろ父親によって施された封印が解かれた、という感じ? ちょっと思ったのは、灼のこのメンタリストスキル、実はそういう精神疾患だった……みたいなことにするのはアリだろうか。ちょうどユーストレス欠乏症の逆というか、他者への共感が止められない、というような。『PSYCHO-PASS GENESIS』で、シビュラ社会に生きる人はミラーニューロンが発達していて他人への共感がしやすい(なのでサイコハザードが起きやすい)みたいな話があったし、灼はそれがとりわけ顕著で、通常ならあっという間に色相が濁って潜在犯か要執行レベルにまでなってしまうが、免罪体質ゆえにそこまではいかなかった、とか。それを父親がメンタリスト技術を教え込むことでスキルとして昇華させていた、ある種のサヴァン症候群みたいな? まあ妄想に過ぎない。
3期劇場版への壮大な引きを残して物語の幕はひとまず下りる。うすうす感づいていたことではあるが、多分当初はこの後の3期劇場版まで含めて『PSYCHO-PASS 3』の1シーズンだったんだろう。諸々の都合か何かでアニメは1時間×全8話+劇場版という特殊構成になったと思われる。だからここで尻切れトンボに終わってしまうのはまあ許せる(別に怒った記憶もないけど)。ただそれでも、朱の事件の顛末は結局3期劇場版でも明らかにはならず、今度の新作で語られるわけで、そうなると各巻の尾頭を朱の独白で飾る構成は、ちょっとどうだったんだろうという気もする。狂言回しとしては悪くなかったけども。でもやっぱり情報開示が少なすぎたと思う。言うことなくなっちゃってなかったか?
まあそうした鬱憤は今度の新作で晴らすとして、いよいよ次は最前線、3期劇場版のノベライズ。著者は変わってるそうだが、果たしてどうなっているのか。

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