11/28 『漫才過剰考察』を読んだ
令和ロマンが今年もM-1に挑戦するということは、去年優勝直後にもう言ってたし、その後の快進撃を見てもそうなんだなという感じだし、きっと今年も決勝までは大方行くことだろうとは思っていたが、二連覇まで決めるかどうかはかなり難しいだろうとごく自然に思っていた。それはやっぱり相当難しいし、連覇は偉業度としては最高だけど待望度としてはやっぱり新王者だし。と思っていたのが、本書を読んだらちょっと連覇もなかなか有り得るんじゃないかという気になってきた。それは実力や考察による説得力というのもあるけど、それよりもまえがきの「これまで」を読んで、ここまで「優勝」に急き立てられてたのかと認識を改めたからだ。M-1優勝によって、まるでラストイヤーかのように己を追い詰めている。先日読んだNON STYLE石田の『答え合わせ』によればNON STYLEは優勝後の再挑戦はモチベーションが低く、パフォーマンスもだいぶ悪かったという話だったが、であれば今年の令和ロマン(というかくるま)のモチベーションは昨年以上であり、パフォーマンスもそれに順ずると思われる。
また、まえがきで頻繁に登場する「使命」という言葉。これほど使命感なるものに突き動かされているのは意外だった。もっと興味や嗜好で動いているものだと思っていた。何をそこまで使命に思うことがあるのだろう……って、それはまえがきで書かれているわけだけど。この場にいる以上は、何かに選ばれ導かれるように舞台に押し上げられている以上は何かしらの役割を果たさなければいけない……というのは、やはり中高のラグビー部で培った感覚なのだろうか。コート(なり、ピッチなり)に上げられたスポーツ選手の心理じゃないかと思うんだよな、……という考察。
そしてそこから続くM-1グランプリの分析とお笑い界の潮流、東西お笑いから派生し補完する南北お笑い仮説もとても面白く読めた。ブレインストーミングのように連想をばら撒きながらケーニヒスベルクのごとく全てを網羅できる順序を見出していく様は、読んでいるだけである種の快感を呼び起こす。講談のような、あるいは単なる独り言のような文体のおかげで、著者がふだん考察の果てに得ている快楽物質をおすそ分けしてもらってるような気分になれた。
今年のM-1も改めて期待が膨らんだし、真空ジェシカの優勝を夢見ている身としては脅威の増大にもなったけど、それは二連覇という快挙を期待する気持ちと背中合わせでもある。如何なる結果であれ、更に広がる考察がまた来年の今頃あたりに読めたら面白いだろう。東西南北のお笑いが揃ったなら、次は地下、そして天上お笑いかな?